閉じ込めちゃいたい【乙骨憂太】

壊れる ページ20

「おまたせしました。てりやきチキンのサンドイッチとサラダでございます」





本当に久しぶりの外食。



目の前にある料理も他のテーブルにある料理も、全てがキラキラして見える。



気づかなかっただけで、私も相当お腹が空いていたらしい。





「......Aちゃんの口に入るのは僕が作ったものだけでいいのにな」





ぼそっ、とそんな呟き声が聞こえた。





「いただき.....ます」





いつになく大きな口でサンドイッチを頬張る。



途端に溢れ出すソースとチキンの旨味。



多分これは、これまで食べたサンドイッチの中で1番美味しいんだと思う。



......でも。





「.........」





昨日に引き続き、やっぱり味がしなかった。





「うん。このサラダ、色んな野菜が入っててすごく美味しい」



「Aちゃんも美味しい？そのサンドイッチ」



「......うん。すごく、美味しいよ」





今日はいつもと違って外にも出たし、洋服だって買ったし、

置かれている環境はいつもに比べてもだいぶ良かったはずなのに。



結局、私の味覚はぶっ壊れたままなのか。





「たくさん服買っちゃったからか、もう15時だね。

折角だしもうちょっといたいところだけど.....ご飯食べ終わったら高専帰ろっか」



「.....真希さん達が任務から帰ってきてたら嫌だし」





今日はたまたま、乙骨くん以外の高専生が任務に出ていた。



五条先生ら教師軍も大半が任務に出ている。



つまり、私を誰にもバレずに外に連れ出すには絶好の日和だったわけだ。




帰りが遅すぎると私とみんなが鉢合わせちゃうかもしれない。



多分乙骨くんはそれを懸念している。





「こんな機会、もうなかなかないと思うけど.....楽しかった？Aちゃん」





にこにこしながら乙骨くんは私にそう聞いてくる。



久しぶりに外に出れたし、好きな人と一緒にデートできたわけだし、

今日はこの上なく特別な日だった。



私も楽しかった。そう言いたいのに。





「.......A、ちゃん？」





あれ、なんでだろう。



どう頑張っても、口に出せそうにない。

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