諦める ページ13
あれから何時間が経っただろうか。
流れ続ける血を止める手段も見つからず、ただぼーっとしてることしかできない。
.....流石に頭がクラクラとし始めた。
その時、ガチャ、と扉の開く音が聞こえた気がした。
「.....A、ちゃん?」
私の足を見て、乙骨くんは真っ先に私を抱き締めた。
「.......逃げようとして、ナイフで足を傷つけたんだね」
「.....鍵、かかってるなんて思わなかったから」
「僕のことちゃんと見てれば分かってたはずなのに」
ぽかぽかとした温かさが私を覆う。
この感じ.......任務でヘマして助けてもらったあの時と同じだ。
反転術式の温かさ。
乙骨くんからの愛を感じる、正の感情の呪力。
「そんなに逃げたかった?」
「.....やり直せる可能性が少しでもあるなら、諦めたくなかった」
「ふーん。そう」
つまらなそうな顔をして、乙骨くんは治った私の足首をなぞる。
「確かに、僕なら傷はいくらでも治せるよ。跡も残さず」
「.....でも、痛かったでしょ?苦しかったでしょ?僕は君にそんな思いしてほしい訳じゃない」
「もうやめてね。こういうの」
どこからか取り出した新しい鎖を足にはめられる。
ため息をついた乙骨くんは、私の頭をぽんっと撫でた。
「もしかしたらのために予備でもう1つ用意しといたけど、まさか本当に使う羽目になるとは」
「これは予備にもう一個用意しといたほうがいいのかもしれないね」
「.....あ、そうだ。あともう1つ」
手を掴まれ、何かをガチャっとはめられる音がした。
「こんなことがもうないように、これも付けといてね。
僕はAちゃんを信頼してたから付けないでいてあげてたけど......自業自得だから」
その瞬間、何かがぷつりと切れる音がした。
.......もう、いいや。
手の自由も効かなくなった。もうここから逃げる手立てもない。
それに多分、逃げても乙骨くんと普通の関係にはなれない。
可能性が少しでもあるなら逃げたいとか思ってたけど、無理だ。
どうせ歪な関係のままに決まってる。普通の恋人になれる可能性なんて0%に等しい。
.....それなら、諦めたほうが楽だ。
足掻くのも疲れた。もういいや、なんでも。
歪ではあるにしても、ここなら乙骨くんからの愛を感じられるんでしょ?
ならもう......いいじゃん。このままで。
―――諦めよう。
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弓月有無%(プロフ) - 初コメ失礼致します!!完結おめでとう御座います。狂愛、ヤンデレや特にかん,なんきん系本当に大好きで尚且つストーリーも良くて、ストルック?と言いますか、ただ好きで自己的に戻ってくる凄く良かったです!!他作品も読ませて頂きます!是からも応援しております (3月9日 21時) (レス) @page39 id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
金糖の少女 - ェッ、ヤダ乙骨パイセン閉じ込めてくださ(絶命)え、めちゃめちゃ言葉の言い回しすきです、言葉のチョイス神ってますか?神ってますね(自己完結)特に最初のつま先から頭のてっぺん〜ってところほんと読んでて天才か?ってなりました! (1月8日 21時) (レス) @page1 id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)
碓氷エマ(プロフ) - 匿名さん» 返信遅くなってすみません...!プリ小説では活動してないです!良ければ作品の方教えていただいてもよろしいですか...? (8月27日 20時) (レス) id: 63021b120b (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - すみません、主様ってプリ小説でも活動してますか?プリ小説の方でこの小説と似たようなお話があったので連絡させて頂きました。最後になりましたがこのお話とても好きです応援してます (8月21日 15時) (レス) id: 9346b68fad (このIDを非表示/違反報告)
みどり(プロフ) - やけに私の好みどストライクだなぁと思ったら、「病みと最凶は紙一重」の作者様....!!どおりで!あぁもう好きです!!!!生きる糧です!!ありがとうございます!ありがとうございます! (2023年2月5日 19時) (レス) id: 9a5127d1cc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:碓氷エマ | 作成日時:2023年1月16日 19時