片目が義眼の転校生は...【名探偵コナン】

I＿29 ページ32

赤井side





処夏、人口密度の高い東都では平均気温が他県より若干上回るのはざらではない




そんな日。沖矢の姿で買い物を済ました帰路の事




今いる位置から工藤邸まで目と鼻の先の距離で






...目を疑った。思わず翡翠を見開く





工藤邸の門前に停車するのは何度も目にした黒光りのポルシェ




＿＿ナンバーまでもがあの男のものだと認知した瞬間邸内から出てきたのはまさにその男＿＿ジン、で



咄嗟の判断で脇道に身を滑らせる



先方を窺うように顔だけ出せばエンジン音からの数秒後に走り去って行くポルシェ





一体この家に何の用だ



そもそも何故中に入れて＿＿




「(まさか、)」




中にはぼうやただ一人



何かあったのではとその場から飛び出した瞬間






『こんにちは』





刹那、目の前の少女が何処からともなく現れた




彼女の名は確か...黒澤A




「あぁ、こんにちは」




唐突過ぎる登場に反応が遅れたものの何とか取り繕う


それよりも早くぼうやの容態が＿＿




『コナン君なら何も心配する事はありませんよ』


「＿＿何？」



ピクリと跳ねた眉


まるでその反応を待っていたかのようだ





『さっきの男の人ね、...私の兄なんです』






＿＿ガツンと鈍器で殴られたような衝撃だった




ジンが、この少女の兄だと？





『兄はあんな見た目してるけど実は律儀で、泊まりのお礼にと菓子折り持参してたみたいです。住所までは教えて無いんですけど、私の携帯するスマホにGPSが組み込まれてるから場所は特定されてるんです。でも流石に過保護ですよね』




呆れた風に笑うが『兄』を語る少女は心無しか幸せそうに見えた



『...暑いですね』


「そう、ですね」


『＿＿ハイネック、まだ着てるんですね。何か事情でも？』


「事情が無いと着てはいけないという規則は無いと思いますよ」




子供相手に大人げないとはこの際言ってられない


ごく僅かに笑みを貼り付けた





『沖矢昴って、いい名前ですね』



クスリと意味ありげに微笑んだ、その顔は



ジンそっくりだ





「＿＿We know accurately only when we know little: With knowledge doubtincreases.」


『＿＿シャーロック・ホームズの名言



知と共に疑いは育つ、ですね



...まぁでも疑いなんて順飛ばしで確信へと繋げたでしょうけど』



「＿＿真相はこの世界を見てきたその片方の目に聞いてみるといい」




互いが互いに睨み合って、背を向け歩き出した

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