片目が義眼の転校生は...【名探偵コナン】

Case-by-case＿23 ページ26

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「ゲーテですか、...いいですね」



彼の掌に収まる分厚い本を手渡される際、彼が口を開いた



「＿＿There is strong shadow where there is much light.」



『...光が多いところでは、影も強くなる』



ゲーテの数多の名言で彼は何故これを選んだのか。全くもって意図は掴めない




プラスマイナス間粒子に流れた電流がプロセスを経て雲を作り出す様に


欠片同士がぶつかり合い、静電気を生み出す雨雲の如く


＿＿電荷同士が引き寄せられる





「あー！沖矢さん何処行ったのかと思ったら、」



程なくして姿を見せたコナン君へ意識を移す



...沖矢さん？



「Aさん、僕の紹介したいって言ってたのがこの人で」

「沖矢昴です。この家には居候させて頂いている身でして＿＿以後お見知りおきを」



糸目で微笑むその表情は最早何処を見つめているのかさえ分からない


そんな彼にかける言葉は決まっている




『初めまして、黒澤Aです。今日はお世話になります』



ゲーテ詩集を持つ手を下げてきっちり腰を折った




「じゃあそろそろ夕飯にしよう。沖矢さんが完成度の高い夕食を準備してくれてるから」

『お腹空いてたから楽しみ』

「はは、見る前から持ち上げ過ぎないで下さい」




＿＿光の多いところでは、影も強くなる



私達は貼り付けた笑みと剥き出しの詮索に


この場をやり過ごす為だけに


知らない振りをして、互いに目を逸らして


こんな滑稽な姿でさえ心の何処かで




＿＿それらを一種のスイーツとして嗜好として、楽しむ悪魔が潜んでいる




憐れで哀れな人間の生み出す世界観ほど、面白く、惨めで、＿＿人道を問うものは無い

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