├ ページ14
◇◆◇
【備考】
◇ 過去
祇園麗は、家柄にも家族にも恵まれている。父親は少し厳しかったが、彼のおかげで礼儀や教養を身につけられた。母親はもう顔もよく覚えていないが、朧気な記憶を辿れば優しく接してくれた光景ばかりが出てくる。
彼女はあまり体が強くはなく、麗が小学校に上がる前に病死してしまう。まだ幼い麗は母親が死んだという意味すらもよく分からず、ただ淡々と父親に連れられるまま彼女の葬式に参加した。
それから一年と少し、麗は小学生になる。彼女は入学式でとても可愛らしい――それこそ学年で一番可愛いのではないかと疑うほどの同級生、卯月紗來と出会い、クラスが同じだったこともあって瞬く間に親しくなった。
それから数年――二人が小四になる頃までは、二人は親友だった。しかし、ある日麗は紗來からとある告白を受ける。
「あたし、麗ちゃんのぜんぶが好きなの。麗ちゃんはどう？ あたしのこと、好き？」
そのとき、麗はその「好き」の意味が分からなかった。その言葉には確かに恋慕の意が込められていたが、当時の麗にとって女の子が女の子に恋するというのはありえないことで。しかし、親友と思っているゆえに紗來の好きを否定するわけにもいかなかった麗は、後ろめたさを感じながらも紗來に自分も好きだと返した。
その出来事以来、二人の関係性は少しずつ拗れ始めた。紗來は以前よりも麗と一緒にいる時間が延び、元から賞賛していた麗の容姿や服装をはじめとして、文字や所作、声に至るまでほとんどのことを褒め始めるようになる。特に彼女が気に入っていたのは文体であり、たくさんのコンクールで入賞していた麗の文章をいつも「きれい」だと褒め称えた。
それと同時に、紗來は自身の容姿や性格を少しずつ麗に寄せていくようになる。ボブに拘っていた髪を長く伸ばしはじめ、性格も活発だったはずがお淑やかに。そんな紗來の変化に麗が気づかないわけもなく、ある冬の日、麗は単刀直入に紗來に変わった理由を聞く。
「麗ちゃんに憧れてるの。あたし、麗ちゃんみたいになりたいの。」
笑顔でそう言った紗來に、麗は唖然とすることしかできなかった。麗の反応を待つ紗來の顔には、どこか狂気が見え隠れして。それでも、麗は勇気を振り絞って言うしかなかった。
「あなたは――紗來は、紗來のままが一番すてきです。だから、わたしの真似事なんてやめてください。ね？」
◇◆◇
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
睡夢(プロフ) - .｡. ° ☆りんか☆° .｡ﾟさん» 了解しました、ボードの方にスレ立てしますね……！ (2022年12月5日 21時) (
レス) id: 2fe18450d4 (このIDを非表示/違反報告)
.｡. ° ☆りんか☆° .｡ﾟ(プロフ) - 両方組みたい…と我儘言いたいところですが、とりあえず楂古聿くんのほうでお願いしたいです…！！ (2022年12月5日 21時) (レス) id: 8fecd180f4 (このIDを非表示/違反報告)
睡夢(プロフ) - .｡. ° ☆りんか☆° .｡ﾟさん» お誘いありがとうございます……！ もちろん組ませていただきたいです、関係を組ませていただくのはどちらの方とでしょうか……？ (2022年12月5日 21時) (レス) id: 2fe18450d4 (このIDを非表示/違反報告)
.｡. ° ☆りんか☆° .｡ﾟ(プロフ) - こんばんは、同企画に参加しているりんかと申します。もしよろしければうちの子と関係組んでいただけないでしょうか…？ (2022年12月5日 21時) (レス) @page20 id: 8fecd180f4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
