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廉「まずい、もうすぐそこまで来ている。
A、この巾着と着物を持って行け。何があっても戻ってくるなよ。」



『でも、わたしには霊力が、』



廉「霊力が無いのは唱詠の呪いのせいだ。ここを出れば解けるはずだが、それまでは少しだけ俺の霊力を分ける。長くは持たないけれど、これで俺の式神ははっきり見えるはずだ。」



『廉っ、わたしっ』




廉「時間がない。早く行け、」



『廉を残して行けないよ!こんなにしてもらって、殺されるってわかってて残していくなんて、』



廉「A、俺はね。この力を正しいことに使いたいとずっと思ってきたよ。それがやっと叶うんだ。だから、今は俺を信じて言うことを聞いてくれ。」



『っ、、廉、』



廉「泣くな、頼むから。
朧に行けば、きっとお前を助けてくれる人がいる。お前の父上がそう言っていた。九人の妖を探すんだ。」



『九人、、』




廉「A、目を閉じて、」




言われた通りに目を閉じる




廉「少しだけ俺の霊力を分けるよ。絶対に無事でいて。何があっても戻って来ちゃダメだよ。」




瞑っている目の上に廉の掌が触れるのがわかると、目の奥がじんわりと温かくなる。




廉「もう行って、西の方だよ。」



『っ、、また会える?』



廉「、、会えるよ。絶対。」






「いたぞ!生かしておくな!」


「皇女様のご命令だ!殺せ!!」


「逃がすな!!」





廉「行け!!ここは俺が止めておく!走れ!」




廉はわたしの背中をドンと強く押すと、追手の道を阻むように立った。




廉「生きていればまた会える。俺は絶対に死なないよ。
だからA、お前も生きててほしい。」



『廉っ、、』



廉「行けっ!!!」




悲しくて堪らなかった。何もできない自分が不甲斐なくて、情けなくて堪らなかった。逃げることしか出来ない自分が、弱い自分が許せなかった。




廉「A!!行け!!」




廉の叫びのような声に、わたしは足を動かして、



廉の手を取った。




廉「何してっ、」



『嫌だ、お願いっ、、』



廉「馬鹿っ、ほんとお前は、」




廉は悔しそうな顔をすると、指笛を吹いた。




廉「ごめんな、A。もうこうするしかないから。」



『えっ?』




すると空から大きな羽音と共に真っ白な大鳥が現れると、廉はわたしを抱き上げて背中に乗せた。




『お前が生きててくれれば、それだけでいい。』




「待って、」





廉に伸ばした手は、寸前で届かない。


どんどん地面が遠くなって、追手に囲まれる廉が見えたけど、戻ることはもう叶わなかった。

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Asura(プロフ) - ありがとうございます!楽しみなしてます😆 (6月9日 1時) (レス) id: 79a3f00215 (このIDを非表示/違反報告)
スヒョン(プロフ) - Asuraさん» はじめまして!コメントありがとうございます!まだ続編移行しておりませんので、しばしお待ちください!移行しましたら移行先貼りますね😊 (6月8日 1時) (レス) id: 923ba31eb7 (このIDを非表示/違反報告)
Asura(プロフ) - 初めまして!スヒョンさんのお話大好きです❤️いつも更新楽しみにしながら読ませていただいてます😆突然なのですが、続編の移行先はどこになりますか? (6月8日 0時) (レス) id: 79a3f00215 (このIDを非表示/違反報告)
スヒョン(プロフ) - 39ra1sh0wさん» コメントありがとうございます!usermho6x4ya37←こちらになります!作品名検索でも出てくると思います! (6月7日 22時) (レス) id: 923ba31eb7 (このIDを非表示/違反報告)
スヒョン(プロフ) - はなさん» はなさんコメントありがとうございます!嬉しいです😊 (6月7日 22時) (レス) id: 923ba31eb7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:スヒョン | 作成日時:2023年4月22日 2時

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