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「見えた!玉藻、あの木の影にいる!」
聞き覚えのある声が聞こえて辺りを見回してみるけれど、霧が濃すぎてそれがどこから聞こえて来るのか分からない。
【手を地につけて目を閉じよ】
またあの声が頭の中で響いて来る。逆らう気力もなく両の手を地面につけて目を閉じた。掌から地面に何かが流れていくような感覚が伝わって来る。けれどどちらかと言うと力を吸われているようにも感じて
『ぁ、』
力が抜けてその場に倒れ込んでしまった。
【なんとひ弱な体に憑いたものよ】
目を閉じたまま、倒れた体を起こす気力もなく、異様に冷たく感じるその声だけが響いて、わたしは意識を手放した。
気がつくと海の底のような暗く深い場所に立っていて、瞬時に「夢の中」だと思った。白い霧が辺りを取り囲むけれど、私の目の前には十二単を身に纏ったこの世のものとは思えないほど美しい女の人が立っている
『、誰?』
【全く、あれしきの事で倒れてしまうとは。これまで霊力を使ったことがないと言うのは真だったようだな。】
「あの、」
【何故雪乃屋を出たのだ。あのままあそこに居れば、鬼蜘蛛に襲われることもわざわざわたしが出向くこともなかったのだ。】
どう言うわけか、わたしは怒られているようだった。
『私は陰陽師の人間なので。妖憑きの皆さんとは、敵対するのは当たり前です。それに、わたしの事情に、巻き込みたくない。』
【馬鹿かお主は。もうすでに巻き込んでいる。】
『え?』
【それに、お前も妖憑きだ。不本意ではあるが、私がお前に憑いたのだからな。】
『え、わたしが?というか、あなた妖なの?』
【わたしの名はかぐや。この世の妖全てを生み出し司る者だ。光栄に思うがいいぞ。】
『・・・はぁ。』
【なんじゃその反応は。せっかく切った髪や体の傷も治してやったのに。】
『え?そうなんですか。それはありがとうございます、』
【まぁ良いわ。それよりお前、これから一人では犬死にするだけだぞ。雪乃屋の連中と離れるな。】
『そんなの無理です、嫌われてるし』
【そんなことは知らん。自分でどうにかせい。】
『わたしに死なれたら困ると言ってましたよね?』
【さぁ、どうだったかのぉ。】
『・・・』
【とにかく、わたしが憑いていることは大体の妖ならわかる。追い出されることはないじゃろ。】
なんて適当な妖なんだ。この人が妖を司ってるなんて到底思えない。
【失礼なやつじゃ。もう帰れ】
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Asura(プロフ) - ありがとうございます!楽しみなしてます😆 (6月9日 1時) (レス) id: 79a3f00215 (このIDを非表示/違反報告)
スヒョン(プロフ) - Asuraさん» はじめまして!コメントありがとうございます!まだ続編移行しておりませんので、しばしお待ちください!移行しましたら移行先貼りますね😊 (6月8日 1時) (レス) id: 923ba31eb7 (このIDを非表示/違反報告)
Asura(プロフ) - 初めまして!スヒョンさんのお話大好きです❤️いつも更新楽しみにしながら読ませていただいてます😆突然なのですが、続編の移行先はどこになりますか? (6月8日 0時) (レス) id: 79a3f00215 (このIDを非表示/違反報告)
スヒョン(プロフ) - 39ra1sh0wさん» コメントありがとうございます!usermho6x4ya37←こちらになります!作品名検索でも出てくると思います! (6月7日 22時) (レス) id: 923ba31eb7 (このIDを非表示/違反報告)
スヒョン(プロフ) - はなさん» はなさんコメントありがとうございます!嬉しいです😊 (6月7日 22時) (レス) id: 923ba31eb7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スヒョン | 作成日時:2023年4月22日 2時