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森の先に提灯の灯りのようなものが見えて、地面を踏む足に力が入る。
森をやっとの思いで抜けて、堀に掛けてある城下町に続く小さな橋を渡って小さな路地に身を潜める。
「ここまでくれば大丈夫・・・」
先程まで背中で感じていた悍ましい冷気はもういなくなっていた。わたしはその場に座り込むと呼吸を整えようと大きく息をする。
「結界が張ってあるというのは、本当だったみたいだな」
悪いモノが入ってこられないようにこの城下町には見えない壁のようなものがあると聞いていた。
やはり、ここにきて正解だったようだ。
わたしは着物の袖と袴の裾を軽く払うと、泊めてくれる宿を探すため、ゆっくりと歩き出すが、懐の重みがなくなっていることに気づく。
「しまった、森の中で落としたんだ・・・」
お金がなければ何もできない。
森に戻るわけにもいかずにその場に立ち尽くした。
すると、後ろから鈴のような音が聞こえて振り返る。が、しかしそこには誰もいない。
「?」
?「何してんだい?こんな夜半に」
おっとりとした、それでいて落ち着いた女性の声が聞こえてまた首を正面に向けると、帯に鈴を付けた桃色の着物を着た女性が立っていた。髪は後ろで束ね、華やかな簪を揺らしている。
目が大きく薄い唇。女性にしては背が少しばかり高いだろうか。
「・・・」
?「おかしいねぇ、変な気配がしたと思ったんだけれど。」
「・・・」
?「あんた、傷だらけじゃないか、大丈夫かい?」
「(頷く)」
?「ここの人間じゃあないね?どこからきたんだい?」
「・・・」
優しくも芯を突くような問いに答えられずにいると
?「口が、効けないのかい?」
心配そうに眉を下げてそう言った。
その方が自分には都合が良かったので、頷くと、はぁ、とため息混じりに近づいてくる。
?「かわいそうに、一体何があったんだい」
独り言のようにそういうと、目線を合わせるように少し体を屈ませた。
何も答えないと言わんばかりに視線を下へ逸らす。
?「んん、お腹は空いてるかい?」
意外な問いかけに、、思わず目を見開いて顔を上げてしまう。
?「ふふっ、なら、ついといで。
世話は出来ないけど、今日の風呂と晩飯くらいは面倒見たげるよ」
ふっと笑うと帯につけた鈴が鳴る
「こっちへおいで」というかのようだった。
少し怪しい気もするが、不思議と警戒するほどの悪意の類のものは感じない。頼る人もモノもいないのでとりあえずついていくことにした。
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Asura(プロフ) - ありがとうございます!楽しみなしてます😆 (6月9日 1時) (レス) id: 79a3f00215 (このIDを非表示/違反報告)
スヒョン(プロフ) - Asuraさん» はじめまして!コメントありがとうございます!まだ続編移行しておりませんので、しばしお待ちください!移行しましたら移行先貼りますね😊 (6月8日 1時) (レス) id: 923ba31eb7 (このIDを非表示/違反報告)
Asura(プロフ) - 初めまして!スヒョンさんのお話大好きです❤️いつも更新楽しみにしながら読ませていただいてます😆突然なのですが、続編の移行先はどこになりますか? (6月8日 0時) (レス) id: 79a3f00215 (このIDを非表示/違反報告)
スヒョン(プロフ) - 39ra1sh0wさん» コメントありがとうございます!usermho6x4ya37←こちらになります!作品名検索でも出てくると思います! (6月7日 22時) (レス) id: 923ba31eb7 (このIDを非表示/違反報告)
スヒョン(プロフ) - はなさん» はなさんコメントありがとうございます!嬉しいです😊 (6月7日 22時) (レス) id: 923ba31eb7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スヒョン | 作成日時:2023年4月22日 2時