「鈴の音の導く先」 ページ1
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吐く白い息が夜の闇の中へ消えていく。
太い木の根元に背中を押し付けて音を立てずにしゃがみ込んだ。
裸足で夜の森の中を彷徨う私の足は、傷だらけの上に寒さで震えて真っ赤になっている。
足だけではない、私の体は痣と傷だらけだ。
背中の無数の傷が寒さによってピリピリと痛む。
天を仰げば黒い枝木の隙間から青い星が点々としているのが見えたが、黒い雲がそれを覆い隠そうとしていた。
なんとかこの森を抜けなければ。
森の向こう側に淡い光がチラチラと見える。
「朧の都」と呼ばれるこの辺りでは一番大きな城下町だ。
あそこまで行けば、追っ手も入ってこられないはず。
呼吸を整えて慎重に一歩を踏み出すけれど、
パキッ
乾いた枝の折れる音が響いた。
「しまった、」
途端に後ろから冷たい空気が突風のように吹いてくる、冷気に混じった重く粘っこく、憎悪に似た空気に足が竦む。
捕まったら終わりだ。
これまで生き抜いてきた経験からなのか本能的な生への執着なのか、今すぐこの場から離れなければと直感的に思う。
瞬時に地面を蹴って冷たい空気にとらえられないように木々の間を縫って進む。
冷たい空気が肺に入って体を冷やしていく。
足が上手く回らない、闇の中で前がよく見えない、体の節々がギシギシと音を立てている感覚に襲われる。
でも、今足を止めてしまっては全てが無駄になる。今までの全てが無駄になってしまう。
脳裏に浮かぶ過去の記憶を振り払うかのように懸命に足を動かした。
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Asura(プロフ) - ありがとうございます!楽しみなしてます😆 (6月9日 1時) (レス) id: 79a3f00215 (このIDを非表示/違反報告)
スヒョン(プロフ) - Asuraさん» はじめまして!コメントありがとうございます!まだ続編移行しておりませんので、しばしお待ちください!移行しましたら移行先貼りますね😊 (6月8日 1時) (レス) id: 923ba31eb7 (このIDを非表示/違反報告)
Asura(プロフ) - 初めまして!スヒョンさんのお話大好きです❤️いつも更新楽しみにしながら読ませていただいてます😆突然なのですが、続編の移行先はどこになりますか? (6月8日 0時) (レス) id: 79a3f00215 (このIDを非表示/違反報告)
スヒョン(プロフ) - 39ra1sh0wさん» コメントありがとうございます!usermho6x4ya37←こちらになります!作品名検索でも出てくると思います! (6月7日 22時) (レス) id: 923ba31eb7 (このIDを非表示/違反報告)
スヒョン(プロフ) - はなさん» はなさんコメントありがとうございます!嬉しいです😊 (6月7日 22時) (レス) id: 923ba31eb7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スヒョン | 作成日時:2023年4月22日 2時