バース ページ39
(side Marco)
『ウェストブルー、セ・ビラッジ・デ・バンブー…』
赤黒く、鈍く輝く水面をスンと香り、クルリとひと回転。極小さく呟かれた一言にサッチの目の色が変わる。疑い半分の目でボトルのラベルをチラリと見る。なるほど、マグレだとしたら見事なもんだ。
サ｢…へえ、お前さん、随分鼻が効くんだな｣
先程までと何ら変わらない口調。しかし明らかな挑発を含んだ男の声色に小さな彼女は肩を揺らす。恐らく無意識の呟きを拾い上げられるとは思ってもみなかったのだろう。やはり彼女は捕虜だった。
狭い海の上の生活では酒は最大の娯楽だ。良質な酒を嗅ぎ分けるだけの能力は海の上の生活が長い程に貴重となってくる。これほど派手でもない彼女がたった一人、海賊船に乗せられていた理由も自ずと明らかになってくる。
『…父が…酒屋を』
口元に笑みを浮かべたまま圧をかけるこの男に堪忍したのか、彼女はポツリと語り始めた。なんでも早くに母を無くし、男手ひとつで彼女を立派な酒屋の跡取りとして育て上げるべく、幼い頃から酒の味や知識を叩き込まれたらしい。父との問答の末、彼女は酒の香りをひと嗅ぎするとその産地を言い当ててしまうという特技を得たのだそうだ。
マ｢そりゃあ良い。食いっぱぐれはしないだろうよい｣
このご時世、読み書きもろくに出来ない人間なんざゴロゴロいやがる。何か強みを持った人間は1人でも生きていけるだろう。
サ｢なあ、お前さん、どんな酒でも鼻が効くのか？｣
『それはまあ…だいたい、なら』
身を乗り出して意気揚々と詰め掛けるサッチに戸惑いつつも少しづつ言葉を交わす彼女。ここでサッチが何を考えているのか、俺には想像もつかなかった。
サ｢こりゃあ丁度良いぜ！なあマルコ、俺ァつくづく俺の料理が可哀想だって思っていたんだ！｣
彼女の返事を聞き機嫌を良くしたサッチが俺の肩をがっしりと抱く。
マ｢何だ、可哀想って、皆美味そうに食ってるじゃねえかよい｣
エースを始め船員はみな4番隊の作る飯に文句を付けたことは無いだろう。
サ｢そりゃ嬉しいがな、俺はもっとコックとしての俺の料理を味わって貰いてえわけよ…そこで俺は考えた！美味い飯には美味い酒が必要だってな！｣
空いた片手で彼女を真っ直ぐ指さすサッチ。面白いイタズラでも思いついたみてえな顔で嬉しそうに言う。
サ｢なあ、この船にバーを作ろう！そこでちゃんとしたグラスで美味い酒を出すんだ。今がうってつけじゃねえか｣
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がまお(プロフ) - ちルチルさん» ありがとうございます！！過去編もうちょっとだけ続くと思われます！これからもどうぞお付き合い頂ければ嬉しいです！！ (2019年5月13日 23時) (
レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
ちルチル - ついに過去編来ましたか！過去の夢主ちゃん可愛いですね〜(´ω`)これからも応援してますからどうぞ更新頑張って下さい！ (2019年5月13日 15時) (レス) id: d78596acdf (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - 焔さん» わあ！ありがとうございます！とっても嬉しいお言葉…！感無量です！ファンだなんておこがましすぎますが頑張らせていただきます！これからもどうぞお付き合いください！ (2019年4月19日 22時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
焔(プロフ) - がまお様 Twitterの通知からこちらに来させて頂きました。とてもお話が面白く読みやすく没頭してしまい一気に読ませていただきました。ファンになりました、応援さてください！続きも楽しみにしております。 (2019年4月19日 2時) (レス) id: 05617d7299 (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - シャノワールさん» ありきたり展開で申し訳無いです…（;∀;）少しでも面白いと思って頂けるように頑張ります！！これからもどうぞ暖かい目で見ていただければと思います！ (2019年3月29日 1時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：がまお | 作成日時：2019年3月15日 15時
