味と香り ページ38
(side Marco)
サ｢つっても、この時間じゃ残り物しか出せねえんだ、悪いな！｣
自分で問いかけておきながらなんとも無責任な答えだ。そんな雑な一人問答に彼女は眉を下げる。飯時を過ぎたこの時間で出せるものなんて有り合わせのまかないみたいなものぐらいだろう。
やたらと楽しげなサッチは彼女の前にカップをトンと置き、流れる手つきで紅茶を注ぐ。五感を刺激するほどむさ苦しいこの船内でこんなに丁寧な仕草を見せるサッチに頬が引きつった。ちっとはそのあけすけな下心を隠してみたらどうだ。
マ｢良いもん食いたきゃ早くに出てこい。1人が不安なら誰かナースでもつけてやるからよい｣
これだけ男所帯な船だ。どこに行くにも人の目が気になるのは当然だろう。しかし鳴り出す腹を暗い部屋で押し殺すのはあまりにも可愛げが無い。
目の前のカップを両手で包み、彼女は目を泳がせた。行き場を探して諦めるように紅茶の水面を伏せ目がちに見つめる。俺達の間には居心地の悪い空気が流れていた。
サ｢相変わらず、世話焼きオジサンだぜ。ほらよ、サッチさん特製・残り野菜チャーハンだ｣
有り合わせにしては香ばしく食欲をそそる香りを漂わせて淀んだ空気を出来たてのチャーハンが掻き分ける。ホン、と上がる湯気に釘付けになった彼女の腹がキュルリと小さく鳴った。慌てて腹を押さえる彼女の耳が赤く染まるのを見ちまった俺とサッチは久しぶりに目を合わせてガキの頃みてえに声を出して笑った。
ひとしきり笑った後に目の前の彼女が真っ赤な顔で震えているのが見える。
マ｢…く、っはは、悪ぃ、好きなだけ食えよい｣
気まずそうに目の前の料理をつつき始めた彼女は次第に夢中で有り合わせの山を崩していく。明日の仕込みを済ませたサッチが3つのグラスと共に酒を運んび、俺の隣に腰掛ける。何か見たいものでもあるんだろう。
サ｢見立て通りだぜ…いい顔して食うな、お嬢ちゃん｣
グラスに酒を注ぎ肘をついたサッチが目尻を下げてメシを貪る彼女を眺めて呟いた。この男が昔言っていた事を思い出した。
サ｢こんな美味そうに食ってくれる奴がいて、コック冥利に尽きるぜ。ほら、飲め飲め｣
機嫌のいいサッチが酒を勧めると握っていたスプーンを下ろし、酒の注がれたグラスを彼女がおずおずと手にする。グラスをクルリとまわし、品良くひと嗅ぎした彼女の口端が少し緩んだ。一口、赤黒く反射する液体を口にした彼女がとある地名を呟くとサッチの目の色が変わった。
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がまお(プロフ) - ちルチルさん» ありがとうございます！！過去編もうちょっとだけ続くと思われます！これからもどうぞお付き合い頂ければ嬉しいです！！ (2019年5月13日 23時) (
レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
ちルチル - ついに過去編来ましたか！過去の夢主ちゃん可愛いですね〜(´ω`)これからも応援してますからどうぞ更新頑張って下さい！ (2019年5月13日 15時) (レス) id: d78596acdf (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - 焔さん» わあ！ありがとうございます！とっても嬉しいお言葉…！感無量です！ファンだなんておこがましすぎますが頑張らせていただきます！これからもどうぞお付き合いください！ (2019年4月19日 22時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
焔(プロフ) - がまお様 Twitterの通知からこちらに来させて頂きました。とてもお話が面白く読みやすく没頭してしまい一気に読ませていただきました。ファンになりました、応援さてください！続きも楽しみにしております。 (2019年4月19日 2時) (レス) id: 05617d7299 (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - シャノワールさん» ありきたり展開で申し訳無いです…（;∀;）少しでも面白いと思って頂けるように頑張ります！！これからもどうぞ暖かい目で見ていただければと思います！ (2019年3月29日 1時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：がまお | 作成日時：2019年3月15日 15時
