鏡2 ページ36
(side Marco)
『ありがとう、ございます』
差し出したホットサンドを両手で大事そうに抱える。おずおずと受け取る彼女に思わず息を飲んだ。こいつよく見れば…
ナ｢ま、手の早いこと｣
ナース長の茶化しを皮切りに、周りを囲むナース達がクスクスと笑いをこぼす。冗談じゃない、いくらこの女が何故だか放って置けないからといってそんなに急に情など湧くものか。
案の定、取り残されてキョトンとした顔で彼女がホットサンドを抱える。折角急いで持ってきたんだ、冷める前に食ってもらった方が俺としたも気分が良い。
マ｢あー、お前らうるせえよい…そら、さっさと食っちまえ｣
先程からエサを前に待てをさせているみたいでむず痒かったのだ。よし、の合図がかかったことで紙袋を広げて目を輝かせる。捕虜という立場で満足に食えない日々が続いていた事だろう。
嬉しそうに中身を持ち上げて口いっぱいに頬張る姿は我が家の末子を思わせる。放って置けない理由はよく考えれば幾つか思い当たる気がする。痛く気に入ったのか黙々と食べ続ける彼女は小指で弾けば逃げ出してしまうような小さい動物みたいだ。
『…ん、おいし』
夢中で貪っていた彼女が口元からパンのカスと一緒に零した一言に場が和んだ。ナース達は頬を緩めて彼女の髪を撫でたり、肩に毛布をかけたりと甲斐甲斐しく世話をする。
ナ｢マルコ隊長、いつまでそうしてお顔を緩めてらっしゃるおつもりで？｣
マ｢は…んな馬鹿なこと、言うもんじゃねえよい｣
足早に部屋を出る。扉を閉める最後の一瞬、彼女の幸せそうな顔が見れてよかったなんて思っちまうのはどうかしてる。どれもこれも昼飯を半分取り上げられたからに違いない。
イラつき混じりに足を早める。しばらく廊下を歩いてから指先で口元を確認する。確かに緩く上がった口角が憎たらしい。
どうしたって言うんだ。冷静であろうとする頭とは裏腹に彼女を前にするとそうも上手くは行かない。
エ｢まーた、なにブツブツ言ってんだ？｣
神出鬼没な末っ子がまた俺の顔を覗き込んで来る。こいつの気配に気付かない程に考え込んでいたとは情けない。
マ｢何でもねえよい｣
また同じように距離を取ると今度はにっと歯を見せて笑うエース。思いついた事をすぐに口にする程素直な俺達の末っ子。次に言うセリフが俺に冷や汗をかかせるのなんて用意に想像がつく。
そしてヤツは屈託のない笑顔で言ってのけた。
エ｢マルコも恋なんてするんだな！｣
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 115人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
がまお(プロフ) - ちルチルさん» ありがとうございます！！過去編もうちょっとだけ続くと思われます！これからもどうぞお付き合い頂ければ嬉しいです！！ (2019年5月13日 23時) (
レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
ちルチル - ついに過去編来ましたか！過去の夢主ちゃん可愛いですね〜(´ω`)これからも応援してますからどうぞ更新頑張って下さい！ (2019年5月13日 15時) (レス) id: d78596acdf (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - 焔さん» わあ！ありがとうございます！とっても嬉しいお言葉…！感無量です！ファンだなんておこがましすぎますが頑張らせていただきます！これからもどうぞお付き合いください！ (2019年4月19日 22時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
焔(プロフ) - がまお様 Twitterの通知からこちらに来させて頂きました。とてもお話が面白く読みやすく没頭してしまい一気に読ませていただきました。ファンになりました、応援さてください！続きも楽しみにしております。 (2019年4月19日 2時) (レス) id: 05617d7299 (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - シャノワールさん» ありきたり展開で申し訳無いです…（;∀;）少しでも面白いと思って頂けるように頑張ります！！これからもどうぞ暖かい目で見ていただければと思います！ (2019年3月29日 1時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：がまお | 作成日時：2019年3月15日 15時
