嵐の中で ページ14
(side You)
ゆらり、ゆらり。体が波で揺さぶられる感覚。陸地にいるはずなのに体を包む揺れは覚醒とともにはっきりしてくる。どうしてだろう。
もしかして、モビーを下りたのも、島で暮らす事も全部全部夢だったんじゃないか。そうだとしたら、どんなに幸せだろう。今日もまた変わらず、戦う皆に労いの一杯を作ろう。去年漬けたプラム酒がそろそろいい頃合いのはずだ。
ラ｢…さん……Aさん！起きて！｣
体がガクガクと揺さぶられて目が覚める。辺りは薄暗く、隣のラグナちゃんの顔がやっと見えるぐらいだ。
『…ここは…』
ラ｢船の中、みたい…｣
覚えのある揺れはやはり船上のそれだったようだ。しかし自分たちは宿屋で睡眠を取っていたはず。嫌な汗が額を伝う。周りには誰もいないようで、隣の彼女の顔を伺うと、普段では滅多に見られないような青ざめた顔色を浮かべていた。
私たちがいるのは狭い檻の中。錠も枷も付けられてはいないところを見ると、私たちに傷を付けたくないということか、何となく状況を理解してきた。
それと同時に嫌な記憶が頭の中を支配する。じっとり湿気た船内。素足から床の冷たさが染みる。両腕を摩る指が震え出す。
ラ｢…Aさん…？大丈夫？｣
青い顔のまま眉を下げたラグナちゃんが顔をのぞき込んでくる。まだ日も浅く、捕らわれていた頃の傷の癒えていないだろう若いこの子。私がクヨクヨしてる場合では無いんだ。青白いその顔を見た時、萎えていた自分が奮い立つ。
『…大丈夫、きっとここから逃げて、またあの島に戻りましょう』
白く細い手を取る。微かに震えて冷たいその手をギュッと握ると零れるような大きな瞳が揺れた。
『まずは様子を見ましょう。あの島の近海は気候が不安定なの。この波からして嵐が近づいているのかも、きっと隙が生まれるはず』
しっかり目を合わせて伝えれば、揺れていた瞳に光が灯る。握っていた手の震えが静まっていく。
ラ｢分かった｣
彼女はゆっくり頷き息を飲んだ。手を握り直し優しく頭を撫でれば強ばった顔が緩んで行く。
きっと大丈夫、そう思った瞬間、大きな音と共に船が今までとは比にならない程大きく揺れた。
ラ｢きゃっ！｣
音がしたのは自分達のすぐ下だった。
『ま、まずい…！暗礁に乗り上げてる…！』
嵐の中だ。荒れ狂う海は船員の視界を阻む。この船はじき沈むだろう。大きく揺れる中、柵を頼りに立ち上がり、隅に積まれた樽を持ち上げ壁に打ち付ける。
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がまお(プロフ) - ちルチルさん» ありがとうございます！！過去編もうちょっとだけ続くと思われます！これからもどうぞお付き合い頂ければ嬉しいです！！ (2019年5月13日 23時) (
レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
ちルチル - ついに過去編来ましたか！過去の夢主ちゃん可愛いですね〜(´ω`)これからも応援してますからどうぞ更新頑張って下さい！ (2019年5月13日 15時) (レス) id: d78596acdf (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - 焔さん» わあ！ありがとうございます！とっても嬉しいお言葉…！感無量です！ファンだなんておこがましすぎますが頑張らせていただきます！これからもどうぞお付き合いください！ (2019年4月19日 22時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
焔(プロフ) - がまお様 Twitterの通知からこちらに来させて頂きました。とてもお話が面白く読みやすく没頭してしまい一気に読ませていただきました。ファンになりました、応援さてください！続きも楽しみにしております。 (2019年4月19日 2時) (レス) id: 05617d7299 (このIDを非表示/違反報告)
がまお(プロフ) - シャノワールさん» ありきたり展開で申し訳無いです…（;∀;）少しでも面白いと思って頂けるように頑張ります！！これからもどうぞ暖かい目で見ていただければと思います！ (2019年3月29日 1時) (レス) id: e776fbd167 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：がまお | 作成日時：2019年3月15日 15時
