あ、黄金じゃない方のマンネです ３

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Side SH


「Aくん、君の夢って？」
『え？』

1日の撮影が終わったあと、監督がAに尋ねた。

撮影は順調、とは言えない。全くオーケーが出ないわけじゃないが、俺とAのシーンはなぜかリテイク数が多く予定は押し気味、というのが現状だ。

今まで、と言っても俺は俳優の中では経験は浅い方かもしれないけど、それでも今までやってきてこんなに、なんていうか自然に演技する奴は見たことがない。

今でこそ実力派俳優、なんて肩書きがついたりしてるが、初めの頃はそれはひどいもんだった。歩き方から指導されたんだ。
なのにAは、聞けば演技を始めたのはここ最近で、しかも教わってもいない、と言った。全く自然で、演技しているというより、その役が存在してる、というか。

こっちのやりやすさは今までで一番だけど、Aはどう思ってるんだろう。



初めて顔合わせをした時は、正直仲良くなれないと思ってた。

高身長で、女みたいに綺麗な顔。何もしなくても痩せてて、肌は綺麗で、演技も上手い。
大学から演劇を始めて死に物狂いでここまで上がってきた俺とは真逆だ。

こんなのと仲良くしても、自分で勝手に劣等感抱いてやな奴になるだけだ。そう思って打ち合わせでも距離を取ってたのに、Aは気づいてないのか、御構い無しに話しかけてきた。

話してみると、なんだかおかしな奴だった。歌も踊りも苦手らしい。でもメンバーのことは大好き。演技も、自分では上手だって自覚はないし、台本を覚えるのは苦手だから自分の中で役を作って役に喋らせるんだ、と一生懸命説明してくれた。


Aは言葉にするのが下手くそで、当たり前のことをわかってなかったり、かと思えば物事の本質を見てるような、不思議な奴。

なんでもできるような見た目して、実は何にもうまくいかない、でも一生懸命に頑張ってるAを見て、純粋に応援したい、力になってやりたい、と思った。


『えっと.........』

監督の質問にAは困惑気味だ。

「君の、アイドルとしての夢だよ。どんなものがある？」

『僕は..........歌と踊りを、誰が聞いても、見ても、上手だ、さすがA、って言ってもらえるように、なる？なが夢です』


しどろもどろ答えるAを監督はじっと見つめている。

監督は今までのリテイクの理由を俺たちに伝えていない。どこがダメなのか、監督の中には答えがあるはずなのに。

「でもAくんは今、それができない状態だ」

監督が椅子に上げられたAの足を指差す。

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