あ、黄金じゃない方のマンネです ３

ANOTHER 1 ページ26

Side JK


ダンス練習の動画を必ずAに送る、という約束で、Aがドラマの撮影に行くことになった。




Aがリビングにメンバーを集めておずおずとドラマの話を始めたときから、ヒョン達は行かせる覚悟ができてたみたいだ。

誰も反対しなかったし、むしろ行ってこい、って背中を押すみたいにAに声をかけていた。


俺は何も言えなくて、Aとも話せなくて、ただ黙ってた。ジミニヒョンと話して冷静にはなれたけど、やっぱりまだ気まずくて。


そんな感じで、練習には集中できるようになったけどAとはまともな会話をしないまま過ぎていったある日。

JM「A、今日から泊まり込みだって」

JK「え」


撮影で宿舎からは遠い場所で撮影するため、一週間現地のホテルに泊まるらしい。


JH「段差とか、気をつけるんだぞ。これ以上悪化させたらまじでシャレにならないからな」

『あはは、気をつけます』


笑い事じゃない。
マネージャーに肩を貸されて、Aはよろよろ宿舎を出ていった。Aのギプスが取れるまではまだあと数週間はかかるそうで、順調にいっても完治はコンサート初日の一週間前らしい。


ドラマの話を正式に受けてから、Aはダンスの練習のほぼ半分くらい、ドラマの撮影に向かうようになった。


ヒョンやマネージャーの話では、そこそこ注目度の高い役で、ドラマのメインビジュアルにもしっかりと顔が乗るそうだ。


『じゃあ、いってきます』


俺たちは今日も練習があるから見送りは玄関まで。段差なんてほぼない小さな玄関だけど、その高低差があってもまだAの方がみんなより背が高いかもしれない。改めて、Aのスタイルの良さを意識してしまう。

そう言えば、普段は出かけるときにいちいち見送りなんてしないからっていうのもあるけど、こうやって一人だけ、玄関の外に出て行くのってどんな気持ちなんだろう。

俺自身の完全個人の仕事はそんなに多くはないから、こうやって見送られる気持ちって、よくわからないけど。


Aは、寂しいって思ったり、するんだろうか。


朝早く出ていったAを無言で見送って、部屋で着替える。横ではジミニヒョンが同じように、寝間着を脱ぎ始めた。



Aより１０センチ小さいヒョン。Aのベッドを使ってても、机を使ってても、なんか、慣れなくて。



ちょっと前まで、ヒョンとおんなじ場所で、おんなじような体制で、Aが生活してた記憶を、脳が勝手に再生する自分がおかしかった。

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