プロローグ:新入生 ページ2
風はまだ少し冷たく、時折舞う花びらだけが春の訪れを告げていた入学式。
ふわふわと靡く髪を手櫛で整えながら案内された教室へと向かうため、渡り廊下を抜ける。
新しい友達できるかな、なんて考えていれば自然に足取りも軽くなる。
「ちゅーす。しんにゅーせー?」
頭上から聞こえた声に小さく肩が跳ねる。
正しくは、背後。
恐る恐る見上げれば、気怠げに私を見下ろす視線。
今この瞬間、私の視界には彼しか写っていない。
ぶわわ、と顔に熱が集まるのが分かった。
頬に彼の髪が垂れて擽ったい。
「えっ、えっと、あの、」
もちろんお互い初めましてのはず。
未だに処理しきれない脳で発する声は言葉にならず、瞬きを繰り返していると、彼が口を開く。
「初々しーね。イイじゃん、制服。似合ってる」
「は、はぇ…あ、ありがとうございます…」
「もうすぐホームルームっしょ。ハイ前見て」
そう言われて素直に視線を前に戻せば、トン、と大きな掌が私の背中を押す。
勢いに身を任せるように目の前の階段へと駆け、階段を一段飛ばしで上がれば後ろから「黒かぁ」と気の抜ける声が聞こえた。ような気がした。
踊り場で振り向けばそこには誰もおらず、彼が発した言葉の意味が分かったのは帰宅してからの事だった。
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ちえ - 乙夜の誕生日気がついてたら終わってた。 (12月9日 19時) (レス) id: ce10ab680a (このIDを非表示/違反報告)
るあちぇ - 先輩後輩系だいすきなんだが!?しかも後輩が女子側のやつがだいすきです、!この作品最高です!!更新頑張ってくださいねー!!! (9月6日 20時) (レス) id: b2fdbadc01 (このIDを非表示/違反報告)
そらちゃま - えーんTTめっちゃすてきです・・・!更新楽しみにしてます! (5月19日 15時) (レス) @page19 id: 46f4834660 (このIDを非表示/違反報告)
融点(プロフ) - 死ぬほど好きです、めちゃくちゃ好きです……。更新応援しています……!! (2023年4月6日 18時) (レス) @page18 id: 6f6f2e1e89 (このIDを非表示/違反報告)
もか@無気力(プロフ) - BAB子さん» いえいえ、自分もついうっかり外し忘れちゃう事とかあるので!皆で教えあっていきましょう💪 (2023年3月27日 20時) (レス) id: 611339ddb1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:BAB子 | 作成日時:2023年3月23日 22時