備忘録 Ⅳ (ページ39)

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＃167．in America ページ39

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　10月初旬。やっと本格的に動く日がやってきたと、青空の下、メンバーと笑い合いながら思う。

　私は今、グループ初の配信限定シングルとして嵐デビュー日に発表予定の新曲、Turning Upの撮影のためにアメリカへと来ていた。

　これから怒涛の配信限定シングルのリリースが始まる。その第一歩目のTurning Up。

「どうですか？アメリカでの撮影は」

　ボヤージュの取材としてそんな質問をされ『やっと始まったなぁという感じがします』と思った通り答える。

　私個人の密着をしてくれている結城さんも同行しており、あちこちから飛び交う質問に思わず苦笑いした。

「A、次だって」

『はーい』

　さとくんに呼ばれ、やっとこさ質問責めから逃れられたと考えてしまうほどには取材クルーに囲まれていたと思う。

　少しの休憩の間にUFOだなんだと騒いだり、潤くんがキレたと現地ダンサーから恐れられたり(私たちからしたら特段キレたとかそういうわけじゃないと思う)、夜はみんなで飲みに行ったりと、撮影と言いつつもアメリカを堪能しているのは否定できない。

「昨日のリーダーの酔い方見た？」

『見たよ、さとくんもだけど、あなたもだからね笑』

「俺〜？」

『まぁみんないい酔い方してたか笑』

　酔ったら一発でわかるまぁくんから指摘されるさとくんがその場にいたら、どんな気持ちなっただろうか。

　かくいう私も「酔っ払いAもカメラに収まってるからね」と改めて言われたため、少し気になってなんだか落ち着かない。

「みなさん楽しそうでしたよ、これぞ嵐って感じでした」

『だって、まぁくん。あれが嵐なんだよ』

「そうだよ、あれこそが嵐なんだよ？」

『今のまぁくんは？』

「今の俺も嵐」

『今の私も嵐』

「じゃあずっと嵐だ」

『いいじゃん、ずっと嵐。最高すぎるや』

　変な会話。何のオチも何の意味もない。だけど、そんな会話ができることこそが、意味があるのではないだろうか。……意味があると思いたいだけだろうか。

「瀬那さんにとって、嵐とはなんですか？」

『……ふふ、言葉では言い表せられないんですよね。家族でも、友達でもない、嵐は嵐、メンバーはメンバーなんです。これは私たちだけの感覚で、私たちだけの特権ですね』

　この答えの意味は分からなくて良いと思う。

　いや、本来なら誰にでも伝わるように答えるべきなのだが、こればかりは私たちだけが味わえたらそれで良い。

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