備忘録 Ⅳ (ページ36)

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＃164．敵わない相手ページ36

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　例えば、写真を撮るとき、建物の中であれば白背景で。外であれば観光地などの名所や場所が特定されてもいい所で撮影する。

　他の人の個人情報となり得る写真はあげないようにしたり、モザイクをかけたりする。

　自分以外の人との写真をあげる際に許可を取ることは絶対条件。広告関係ももちろん気にかける。

　当時そこまで発達していなかったネットリテラシーになぞりつつ一般常識を考えながら、芸能人だからこそ気をつけなければならないことを意識して今までSNSをやってきた。

『今や、写真に映る目をアップして場所特定される時代よ』

「……そんなことできんの？」

『そういう世の中になっちゃったの』

　時代の流れに棹さす。ただ流行を捉えるのではない。あくまで自分たちとファンの子達のためだ。

　そこまでしなければならないのかと考えたことはあったし、そう言われたこともあった。

　でも、プライベートを確保しつつ、ファンの子達との新しい関わり方を取り入れながら、アイドルの瀬那Aとしての地位とブランド名を残していく。そのために、私なりに考えた方法だった。

　

「で。実際のところはどうなの。お前自身は」

『………急にぶっ込むね〜』

「お前にお前の時間がない中、少しでも多く情報を聞き出すにはこうするしかないだろ？はぐらかすなよ？」

　SNSの話から私の話へと転換する。「病院は？行ってんの？」なんてどストレートに聞いてくるシィさんからは逃げられそうにない。

　ラジオ局での一件から、潤に「信用できると思う人にだけは話せること話しておけ」と言われたことがきっかけで、シィさんたちやメンバーには病院へ通っていることを話した。

　他にも、これまでの出来事とか、話せていなかったこととか、まぁとにかく色々と。
　

『それは行ってるよ』

「なんて言われてんの？」

『もっと仕事減らせないのかって』

「それだけ？」

『………休養を、視野に入れたほうがいいって』

「…だろうな」

　今は。今だけは本当に休めない。でも嵐が休止して、そのタイミングで私が休んでしまうと、ほらやっぱりエイトに迷惑かけてる、と思われるのも癪だと思ってしまう。そんな変なプライドが邪魔をする。

　プライドだなんだと言っている間はまだ大丈夫。今までもどうにか通院と服薬だけでコントロールし、個人の活動休止は避けて通って来れた。

　………なんて、そう考える時点で休むべきだと本当は知っている。

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