いい加減にして欲しい【sp】 ページ45
※夢主殆ど出てきません、全然ハッピーじゃありません。
______________…
身を縮込めた。酔い醒ましの為にジャケットの前を開けていたが流石に寒かった。
雪が降るのも近いのかもしれない。身体の芯まで冷やそうとする風が耳元でヒュルヒュルと情けない音を立てる。
吐き出したため息は重くて白かった。忘れる為に飲みに行ったはずなのに酒は何にも流してくれなかった。
辛い。
自覚した時には自身の胸元を押さえていた。喉がひくつきそうになるのを必死に耐えていた。視界が滲んで揺らつくも、ビルの光は何とか零さずに歩いた。
鼻から思い切り空気を取り込めば気道の形が分かるように冷たさを感じた。瞳を閉じても今度は滲まなかった。代わりに鼻先が痛い。風がフードのファーを揺らして頬を撫ぜた。どこか似た感覚を知っている気がした。
「ただいま、」
返ってきもしない返事を待ってしまった。ワンルームは二人では狭くて、でもいっつも寒い時は白いカップを持って『おかえり、』ってそこで笑ってるから。感覚が、体が、覚えてるもんだから。
着信も、通知音も、外を通る足音も全て君だと期待してるのに、どうやって忘れろというのか。
揺れる茶髪を見る度に君のその質感を思い出すのに。
目の前の白いカップが歪んだ。今度は止まらなかった。震える喉も止めなかった。深呼吸したって冷たさを感じることは出来なかった。Aの置いていった香りの薄くなったアロマポットだけが喉奥にこびり付いた。
「まだ、愛してんのに、」
ベッドの傍にもソファの傍にもキッチンにもテーブルにも、Aの影はそこにあるのに触れられない。
馬鹿みたいに手を伸ばしても空を切るだけ。
会いたい。会いたい。
頬を撫でてくれたのは、あの手だった。
「忘れられる訳、ないんだよなぁ」
早く、どこかへ行ってしまってくれ。
________________…
早く冬ならんかなぁ。って思いながら書いた話です。
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ちぃ汰。(プロフ) - 了解しました。続きで書くのでしたら是非拝見させて頂きます。宜しければ続きである事を表記していただけたら幸いです。楽しみにしています。 (2019年10月5日 14時) (レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
絶対匿名03(プロフ) - ちぃ汰。さん» ひたすら毒素の詰め合わせ、と言う短編集にて毒素の話として書こうと思っています。よろしければ閲覧していただけると幸いです。 (2019年10月5日 13時) (レス) id: b60e961817 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ汰。(プロフ) - 絶対匿名03さん» コメントありがとうございます。続きを書いていただけるのでしたら是非拝見したいです。もしよろしければどちらの作品で書かれるのか教えていただけないでしょうか。ありがたいお話ありがとうございます。 (2019年10月5日 12時) (レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
絶対匿名03(プロフ) - リクエストではないのですが、シリーズ最初のApple Tarteの49話(キュラソーを濁らせて)の話の個人的な続きを書きたいのですが、よろしいでしょうか?なるべく作風や元の口調等が崩れないように注意するつもりです。ご返答よろしくお願いいたします。 (2019年10月5日 8時) (レス) id: b60e961817 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ汰。(プロフ) - 暁さん» こんなに長く読んでいただけてるのを知れて嬉しかったですよ、本当に! こちらとしては皆様のコメントはとても励みになるのでありがたいです...! 是非またリクエストでもなんでもコメントして下さると嬉しいです。 (2019年9月5日 10時) (レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちぃ汰。 | 作成日時:2019年6月22日 0時