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『...総統、私も貴方を慕ってました。あの時、望む言葉を与えられなくてごめんなさい。私も、好きだった、ううん、きっと、今も。』
「...何で、」
『ふふ。驚いた?』
笑う彼女の眉が、顰められているのを、俺が気づかない訳無かった。
ずっと、好きだった。断られても。ずっとずっと。
隠してきた想いのはずが、蓋を開ければ、とめどないもので。
苦しくて、苦しくて。
「何でや、あの時...。俺はお前と、幸せになりたかったのに。」
『そんなこと無理に決まってる。あなたはこの国のトップなのよ。』
「そんなことないやろ。お前となら、一緒に居たいと思ったから、俺はああ言ったのに。お前となら何でも超えられると、」
『そうかしら。乗り越える壁以前に私達はそもそも同じ場所に居ないのよ。』
下を向いた彼女の瞳が覗けなくて。もう、踏み込むことを許さない領域がそこに出来ていて。
「...なんで今伝えたんや。お前、今更、なんも出来んやろ。お前が、」
『...分かってる。だから言った。今この時にね。あたしは護衛、あなたは総統。それだけだから言ったのよ。』
再びかち合わせた視線には、もう力強く光が宿っていて。光っていても、決してこぼれないそれが、余りにももどかしくて、残酷で。彼女の決意の、表れで。
「...あんまりやわ。はは。」
『ふふふ、ご令嬢と、お幸せにね。』
頭を抱えて背もたれに体を預ければ、目の前からはくすくすと笑う声が聞こえた。
『狡いでしょう。私、言うつもり無かったのに。貴方が敬語を外せなんて言うから、素直になったんじゃない。』
ケタケタ笑ったその裏で。
彼女のグラスで、水滴が落ちる音が響いた気がした。
否、それは、そうであって欲しいと願った、俺の幻聴なのかもしれないが。
______…
作者、現在ハッピーエンドかけない病を患っております。どうかご了承ください。
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ちぃ汰。(プロフ) - 了解しました。続きで書くのでしたら是非拝見させて頂きます。宜しければ続きである事を表記していただけたら幸いです。楽しみにしています。 (2019年10月5日 14時) (レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
絶対匿名03(プロフ) - ちぃ汰。さん» ひたすら毒素の詰め合わせ、と言う短編集にて毒素の話として書こうと思っています。よろしければ閲覧していただけると幸いです。 (2019年10月5日 13時) (レス) id: b60e961817 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ汰。(プロフ) - 絶対匿名03さん» コメントありがとうございます。続きを書いていただけるのでしたら是非拝見したいです。もしよろしければどちらの作品で書かれるのか教えていただけないでしょうか。ありがたいお話ありがとうございます。 (2019年10月5日 12時) (レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
絶対匿名03(プロフ) - リクエストではないのですが、シリーズ最初のApple Tarteの49話(キュラソーを濁らせて)の話の個人的な続きを書きたいのですが、よろしいでしょうか?なるべく作風や元の口調等が崩れないように注意するつもりです。ご返答よろしくお願いいたします。 (2019年10月5日 8時) (レス) id: b60e961817 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ汰。(プロフ) - 暁さん» こんなに長く読んでいただけてるのを知れて嬉しかったですよ、本当に! こちらとしては皆様のコメントはとても励みになるのでありがたいです...! 是非またリクエストでもなんでもコメントして下さると嬉しいです。 (2019年9月5日 10時) (レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちぃ汰。 | 作成日時:2019年6月22日 0時