明日が来なければ【gr】 ページ31
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※相も変わらずBADENDです。
結ばれません。
______…
『失礼します。』
ハッキリと嫌に響いた声に驚いた。この時間に訪れるのはあの日以来ではないのか。そう思う程に珍しい出来事だった。
あれから、二人でいることすら避けられていた気がする。勿論、周りには気づかせないように。全く憎らしい。でもそんな完璧な所も、俺は。
『総統。いらっしゃるのでしょう。返事して下さいよ。』
「今更遠慮なんて要らんだろう。お前なら普通に入ってきたって構わん。」
『しかし総統。もう貴方は身を固めた人なのですよ。私とて遠慮はします。』
「まだ式は明日だ。それよりなんだ、珍しいじゃないかこんな夜に一人で。」
女にしては短い、しかし男と見るには難しいような短髪をふわふわ揺らしながらこちらへ歩み寄る。
コトコトとなる軍靴の音は男の歩くそれより幾分丁寧で小さく、あんなに強かで恐ろしい戦場の殺し屋も、現実に女なのだと、再認してしまう。
そう、惚れていたのだ。しかし返事は望ましいものではなかった。まあ、そんなものだろう。そう無理やり割り切ってから、何年たっただろう。
『祝いの晩酌を、と。とびきりのを持ってきましたよ。』
「ふん、まさかそんな粋なことをしてくるとはな。」
コイツからの祝杯など、一番欲しくなかった。
けれど久々の会話が心地よくて、俺は感情を殺して盃を受け取る。
『乾杯。』
「ありがとう。」
『おめでとうございます。』
たった、一言。それが、かなり重かった。
「というか、敬語を外してくれて構わんのだが。」
『何を仰いますか。私と貴方の立場をお考えください。』
「頼む。今日だけだ。もう今後こうやって酒を交わすことも少ないだろ。今日ぐらい、昔のように語り合いたいんだよ。」
困った顔をして笑った。薄暗い光の中でもそれはやけに瞳にハッキリと写った。
抑えていた気持ちがふるふると震える。
逸らすようにそっと目を閉じて開けば、彼女の口が丁度開くところだった。
『...今日は、伝えたいことがあって。』
「なんや、改まって。」
昔のような、屈託のない笑みが、嬉しいのに、嫌な予感がした。彼女が、息を呑む音がやけに耳に響いた。
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ちぃ汰。(プロフ) - 了解しました。続きで書くのでしたら是非拝見させて頂きます。宜しければ続きである事を表記していただけたら幸いです。楽しみにしています。 (2019年10月5日 14時) (レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
絶対匿名03(プロフ) - ちぃ汰。さん» ひたすら毒素の詰め合わせ、と言う短編集にて毒素の話として書こうと思っています。よろしければ閲覧していただけると幸いです。 (2019年10月5日 13時) (レス) id: b60e961817 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ汰。(プロフ) - 絶対匿名03さん» コメントありがとうございます。続きを書いていただけるのでしたら是非拝見したいです。もしよろしければどちらの作品で書かれるのか教えていただけないでしょうか。ありがたいお話ありがとうございます。 (2019年10月5日 12時) (レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
絶対匿名03(プロフ) - リクエストではないのですが、シリーズ最初のApple Tarteの49話(キュラソーを濁らせて)の話の個人的な続きを書きたいのですが、よろしいでしょうか?なるべく作風や元の口調等が崩れないように注意するつもりです。ご返答よろしくお願いいたします。 (2019年10月5日 8時) (レス) id: b60e961817 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ汰。(プロフ) - 暁さん» こんなに長く読んでいただけてるのを知れて嬉しかったですよ、本当に! こちらとしては皆様のコメントはとても励みになるのでありがたいです...! 是非またリクエストでもなんでもコメントして下さると嬉しいです。 (2019年9月5日 10時) (レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちぃ汰。 | 作成日時:2019年6月22日 0時