【d!】Lemon Cake【短編集】

望むもの【ut】 ページ22

.




もしかしたら、寝ているかもしれないから。
あまり大きくない声で、そっと言う。



「只今、」


『ん？おお、おかえりなさい、早かったね』



そんな心配をよそに彼女はひょっこりと顔を出して笑った。
つられて笑いながら今度は普通に声を出す。



「腹減った〜、今日ご飯なに？」


『あれ？食べてきてないの？この時間で？』


時計を見れば午後十一時。まあ確かに食べてきたと思うのが普通だなと思って苦笑した。



「ごめん、そりゃそうか、コンビニで何か買ってくるべきやったな」


『大丈夫だよ、軽く何か作るから』





すたすたとキッチンへ歩く彼女に甘えてスニーカーを脱いだ。
別に今日の外出は仕事ではない。いつもの友人達でもない。


こんなに可愛いAがいながら、俺は他の子と遊んできたんだ。


『今日昼は食べた？』


「パスタ。」


『おっけー、麺類は避けとくね』



「ありがとう、流石気が利くなぁ？」



『どうも』




けたけた笑う彼女に今日食べたパスタの写真を見せてやる。




「ほら、オシャレやろ？」


『ほんとだ、何処これ？』


「駅前の裏道はいってすぐにあんねよ、今度連れてったろか」


『ふーん、あそこか、いいよいいよ、別の女の子連れてったら、鬱気まずいじゃない。』





全く責める様子のない笑顔でAはあっけらかんと言い放つ。俺の浮気報告を何の気なしにスルーし、何なら誰と行こうか、と友人達とのトークを開いているようだ。

▽→←▽

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す