canele【ut】 ページ49
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私が黙り込む度に比例する傷を、いつも見て見ぬふりをして過ごしていた。逢いたいなど叶うはずなくて、そんな河清の夢を息もせず飲み込む。彼の優しさは更に傷を抉る。痛くて痛くて心臓が重く脈を打った。彼にそんなこと分かるはず無かった。
いつも私を転がすようにセリフを吐いた。それに溺れてた私も莫迦だったのだ。在り来りなのに、彼の言葉は酷く甘美に私の耳に響く。
例えば麻酔なしで大きく空いた穴を縫合されてるようだった。糸は傷を塞いでいるはずなのに針がチクチク痛い。そして彼がこの部屋から消えたなら、魔法の糸は瞬く間に解け、どぷりと赤い赤い血を流した。溢れる様々な感情が私を苦しめた。
狂いそうだった。思い出の中の私は、彼にとって特別なように見えて。でも本当の特等席は私でない誰かの為に確かに存在していた。彼の得意な嘘が見破れるようになった時、私の夢も愛も幸せも全てズタズタに引き裂かれたのだ。
優しいだけなのは、もはや優しさではない。それも優しさだというのなら、私には優しくして欲しくないほど、酷くそれに嫌悪感を抱く。
──…
｢、Aちゃん、ほら。お土産！｣
今、私の名前、少し考えたでしょう。間違えかけたでしょう。でも言わなかった。彼は私のためを思ってこれを買ってきてくれたらしいから。
何だろうか。手に持たされた白い袋を見つめると、彼の為に伸ばした髪がすだれのように視界に掛かって邪魔くさかった。耳にかけながら台所で袋を開ける。
『…これは？』
｢カヌレやで。前、好きって言うてたやろ？｣
私が思い描いた夢の全てはやはり夢でしかなかった。引き裂かれていたそれはとうとう解けて、砕けたようだった。鬱陶しい髪を後ろにぐるぐる巻きにして纏め、カヌレを少し洒落た皿に出して並べてやる。真ん中に一つ、周りに囲むように五つ。
『ありがとう、ちょっと待っててね。』
私は自室に戻り、白いワンピースを脱ぎ、黒いタイトなノーカラーニットとジーンズに着替える。自分好みでないピンクのルージュを落とし、反対に濃い真っ赤な紅を塗った。もう私で居たかった。そう思った。部屋に戻ると、彼は目を丸くした。
｢…？どうしたん？なんか、雰囲気変わったな。｣
『…良いでしょこれも。』
｢ん、まあ、せやな。｣
照れ隠しでも何でもなく、ただ興味がない故のセリフ。知ってた。あなたの好みを。だから私は、私を捨てた。なのに。あなたは何も私にくれることは無かった。勿論犠牲にすることも。
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ちぃ汰。(プロフ) - 琴葉さん» 毎度のコメントありがとうございます。お待たせ致しましたことお詫び申し上げます。感想もありがとうございます。期待以上の感想を頂けて言葉もありません。続編前向きに検討しておりますのでどうかその時はよしなに。私もあなたのファンでございます。ありがとちゅき() (2020年5月12日 10時) (
レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
琴葉(プロフ) - 夜分遅くに失礼致します。更新の方心待ちにしておりました、そして相も変わらず、否それ以上に素晴らしいお話に胸が苦しく、また切なさが込み上げました。良ければ続編をと思いますが作者様の手が動く限りで構いません。私は何時までも貴方様のファンです。とりますき() (2020年5月12日 0時) (レス) id: fea4b79f15 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ汰。(プロフ) - つらら@ちゃげっ娘。鬱紺色 逆音さん» とんでもございません、しっかりと寝てましたすいません...。ありがとうございます...。勿体ない言葉...。 (2020年1月28日 8時) (レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
つらら@ちゃげっ娘。鬱紺色 逆音(プロフ) - 夜分遅くに大変失礼でしょうが...これだけ...好きです。 (2020年1月28日 3時) (レス) id: 9e136fef77 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ汰。(プロフ) - 夢川さん» いえいえ、全く気にしておりませんのでそんなにお気を使われないでください！感想頂けてとても嬉しいです。星の子一家に一人要りますよね笑 こちらこそリクエストありがとうございました。よろしければまたリクエストしてくださいね。(お仲間でしたか笑) (2019年11月5日 20時) (レス) id: 3f437b8d31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちぃ汰。 | 作成日時：2019年10月6日 18時
