変わりゆく風景［灰谷竜胆］【完】

18歳［５］ ページ5

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文化祭当日



「あいつら人に準備させといてよー」



塾だったりで準備に出なかった奴らが当日当番をやり盛り上がっていた。



「まぁまぁ、それでも高校生最後の文化祭の思い出になれたならいいんじゃない？」



綺麗な横顔に俺の人生での文化祭の思い出はこれかもなぁと思った。



「ありがとう竜胆くん」



「別に暇だったし」








文化祭終わった後もクラスメイトとして話す事はあった。



あくまでもクラスメイトだ。



そして俺と兄貴は天竺に入り学校に行く回数も減っていた。



『竜胆くん明日は学校くる？』



久々のAからのメールに胸が高鳴り『行く』とだけ返事をした。



久々の学校は珍しく人が多かった。



「え？嘘聞いてない！なにも用意してないのに」



そんな女達の声が聞こえた。



「は？」



教室に入るとAと女子数名が集まって居た。



「あ！竜胆くんおはよう！ってもうすぐお昼だけどね」



「無駄にならなくて良かった。これ文化祭のお礼も込めて、義理だけど」



簡単にラッピングされた袋を渡された。




「『オランジェット』初めて作ったんだけど意外に上手くできたから。あげたみんなにも好評だったから安心して」



今日はバレンタインかとその時気づいた。



輪切りにされたオレンジにチョコがかけられて居た。



「お、おう。サンキュー」



みんなに配ったんだろうがそれでも学校に呼んでまで用意してくれた事に口元が綻んだ。



その後も無駄に学校の女達が色々渡してきたが俺にはあの輪切りのオレンジしか頭になかった。



家に帰ってから一人で貰ったオランジェットを口にした。



ほろ苦いチョコと甘いオレンジが最高に美味かった。



ホワイトデーは何を返そうかそんな事を考えながら食べ進めた。







結論を言うと



ホワイトデーを返す事は出来なかった。



2月22日の関東事変で俺は2度目のネンショー入りになってしまった。





それから先もあの苦く甘い、切なく散った初恋の様なオランジェットが忘れられずにいた。

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