集中!ψ能を鍛え上げろ4 ページ26
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「…さま、……ょうさま、」
ーーーん?
誰かに呼ばれてる?
「お嬢様!羽純お嬢様!」
閉じていた瞼をゆっくりと開く。
う、瞼が重い……。
「!! 羽純お嬢様!ああ良かった!お目覚めになった」
「……ど、して」
何故お手伝いさんの田中さんが、研究室にいるのだろう。
いくらお父様が日本から連れてきたベテラン家政婦の田中さんでも、研究室に入る事は許可してないのに。
しかし、研究室の天井の色は白いが、今見ている天井は生成(きなり)色だ。
ここは研究室ではなく、私の自室のベッドの上だという事が判明した。
「貴女は研究室で倒れていたんですよ!昨日の夜から研究室に篭りっぱなしで……、もう、老いぼれをこれ以上心配させないで下さい、うぅ」
「た、なかさん、ごめんなさい、」
掠れてあまり声が出ないが、田中さんに謝る。
幼い頃から、集中すると何時間でも研究室に閉じ篭る私を、田中さんはいつも心配していた。
謝罪の意を込めて、田中さんの手を力なく握った。
田中さんは泣きそうな笑顔で、私の手を包み込むように握り返した。
いつも私の事を実の娘のように思い、褒めたり叱ったりしてくれた人の手は、とても暖かかった。
「もう、無理はしません……多分……」
「そのお嬢様の『多分』には騙されませんよ!」
「う、……ごめんなさい」
「婚約者の空助様にもご迷惑をお掛けして!いくら研究が捗るからといっても、自分の体調管理が出来なければ、元も子もありませんよ!」
「……ごもっともです……」
斉木さんにも連絡したのだろうか。
……この田中さんなら、するだろう。確実に。
斉木さんにも怒ってもらおうという思惑が見えてくる。
連絡しないで欲しい。
せっかく斉木さんに、私の『才能』を披露するチャンスだったのに。
この展開からすると、披露する所か、自己管理も出来ない愚か者のレッテルのみ印象として残ってしまいそうだ。
ふー……と溜め息をついて、ベッドに沈み込んだ。
どうしたものか……。
まだ若干グラグラする頭で考える。
「……斉木さんに、知られたくないです。田中さん、お願い」
「この田中に、その甘え顔は通用しませんよ」
「…………、」
やっぱりグラグラする頭で考えても、何も良い事ない。
「そういう表情は、空助様の前でなさったらどうなんです?」
「効くと思いますか?斉木さんに」
「おやまぁ効かないんですか?それは良かった。これ以上お嬢様を好き勝手させる訳には参りませんからね」
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あああ - 30ページ、アルカイックスマイルじゃないですかね、、、? (2020年4月3日 18時) (レス) id: 400d3f0549 (このIDを非表示/違反報告)
あさぎ(プロフ) - いふれんさん» 改造人サイダーマン2号は、まさかのあの方です笑 (2018年8月27日 23時) (レス) id: 59706cc241 (このIDを非表示/違反報告)
いふれん - 遊太君が言う、改造人間サイダーマン二号ってま、まさか……あの人か (2018年8月27日 16時) (レス) id: 083c75066f (このIDを非表示/違反報告)
あさぎ(プロフ) - ポエムさん» なんと…!嬉しくてつけ上がりそうです(笑)空助さんらしいとかホント嬉しいです!羽純まで可愛らしいなんて言って下さってニヤニヤします…!応援ありがとうございます! (2018年8月17日 17時) (レス) id: 59706cc241 (このIDを非表示/違反報告)
ポエム(プロフ) - やばい…めちゃくちゃ面白いです…!!空助がまさに空助らしい口調で最っ高…羽純さんもとても可愛らしいです…!陰ながら応援しております…!!! (2018年8月16日 21時) (レス) id: 40cccc9e32 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あさぎ | 作成日時:2018年7月15日 17時