斉木空助のψ愛２【斉木楠雄のψ難】

逃避行にはψ心の注意を４ ページ14

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「……あーはい、そうですねイケメンイケメン」

「全ッ然心込もってねェな！！」

「そんな事より、もう市内に着きましたよ。近くに喫茶店が沢山ありますから、そこでほとぼりが冷めるまで待っていたらいかがです？」


先程奪われた端末をサッと取り戻す。

運転手が開けてくれた車の扉を指差して『早く出ろ』と言外に匂わせる。

冷たい対応だと思うが、あの強烈な追っかけから逃がしてあげただけでも感謝して欲しい。
あと斉木さんに連絡しないと本当にヤバい。


「いや！待て！俺に対してこんな塩対応する女が居るなんて信じられない！俺の出演ドラマや映画を見て、その認識を改めさせないと気が済まねェ！」

「信じなくても気が済まなくてもいいで……あ、ちょっと！私は降りませんから！引っ張らないで下さい本当に通報しますよ！！」

「助けてもらったお礼に、心美の美しさと素晴らしさも特別に教えてやるから！」

「それ全然お礼になってないの分かってます！？誰ですか心美って！」


助けてもらったお礼に見ず知らずの女性の事を語られるなんて、恩を仇で返すにも程がある。

だが彼はそれがお礼だと信じて疑わない、澄んだ目をしていた。
これは……関わったらダメな奴だ。

危機感を感じ、車から私を引っ張り出そうとする手を離そうと抵抗したが、男女の力の差は歴然だ。

一応スタンガンも持っているが、彼は有名人だ。知名度がある人間は厄介極まりない。
もしスタンガンを使用して、訴えられたら勝てる気がしない。


「……分かりました。行きますから引っ張らないで下さい。服が伸びます」

「あ、すまん。じゃあ行くぞ」

ハイヤーから降りて、渋々従う事にした。


「ていうかそのワンピース可愛いな！どこで買った？心美にも買って行こうかな〜」

「ハァ〜……貴方に褒めて貰っても全然嬉しくありません……」

「あ？本当にその態度腹立つな！そこは『六神様に褒めてもらっちゃった……！もう一生着替えないわ！』て言う所だろ！？」

「わざわざ声色変えないで下さい」


本当は斉木さんに褒めて貰いたかったのに……まぁ、そんな事言う訳ないか。

人身掌握の手段として、女性の容姿や格好を褒める事はありそうだが、本心ではないだろう。

ああ、今更ながらなんて面倒な人を好きになってしまったんだろう。

心の中で憂いていると、彼がピタリと足を止めた。


「あ、喫茶店ここでいいか？よく分かんねーけど」

「あぁ、ここは紅茶が美味しくて有名ですし、いいんじゃないですか」

「へー。俺紅茶とかよく分かんねーし、なんでもいいよ」


本当にこいつは……。

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