page89 桜吹雪と… ページ41
桜が舞う。
暇があればこの公園に来るようになった。つい最近開花したと思った桜は、もう半分くらい散ってしまったようだ。
実は、先日記憶が戻りかけたとき、あるメロディが頭に残った。最近はずっとそのメロディを口ずさんでいる。
「ふふふふ〜んふ〜ん………」
「何、歌ってるの?」
突然後ろから声をかけられ、ばっと振りかえると、そこには見覚えのない少女が立っていた。
その少女は栗色の髪を横で高く結び、手にはカバンを持っている。
「えへへ。急にごめんなさい!すっごくめちゃうまな歌声が聞こえたから。そうだな、あれはきっとレアチーズケー…」
A「あの…」
「あ。あたし、福原あん!あなたは?」
初対面なのに、すごい友好的なんだな。この人。
A「あ、と…Aです。」
あん「A…うん、いい名前!あ、年齢は?」
A「14歳です…」
その言葉に、あんはぱっと瞳を輝かせた。
あん「同い年だぁあ!!あたしも中学3年になるんだ!ねぇ、いつもここにいるの?」
あんの周りがキラキラ輝いて見える。
こんなに明るい人…カヅキさんに似てるなぁ…
A「いつも…ではないですけど…たまに来てます。」
あん「そっか!じゃあまた寄ってみるね!そしたら会えるかもしれないし。あ、そーだこれ。1つあげる!」
あんから手渡されたそれは、かわいくデコられたマフィンだった。
見るだけで美味しいとわかるほどだ。
A「…いいの?」
あん「うん!今日はうまくできたの!じゃ、また会おうね!A!」
ヒラヒラと手を振りながらあんは去っていった。運動神経も良さそうだ。
Aは手に持ったマフィンをじっと見つめる。初めて外で人と知り合った。しかも女子。怒られないか心配だったが、それ以上に嬉しさが勝っていた。
マフィンを一口食べると、口の中に甘さが広かった。
A「…甘い…」
スイーツが好きなのだろう。というか甘いものが好きなんだろう。コウジが作るスイーツよりもかなり甘い。
A「……けど…」
笑顔でマフィンを渡してきたあんの顔を思い出す。Aはふっと微笑んだ。
A「……あの子らしい。」
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作者名:kiko | 作成日時:2018年7月1日 16時