page84 食べ物泥棒 ページ36
ーヒロsideー
「お疲れ様でした〜。」
はぁ…やっと終わった。
夕食のあと、ヒロは1人仕事に向かった。深夜番組の収録で、終わった頃には夜の11時を過ぎていた。幸い寮からあまり離れていない場所での収録だったので、すぐ帰れそうだ。
ヒロ「ああ、そういえば今日は差し入れが多かったな。全部持って帰らないと…」
「ガリッ…ガリッ…」
ヒロ「…ん?ガリ?」
何の音だ…?何のって、でもこの音は…
それにこの楽屋は今俺1人のはず。
誰かいるのか…?
そっと、足音もならさないようにテーブルに近づく。
「ガリッガリッ。」
音のする方をのぞくと、そこには…
ヒロ「え…スタン?」
スタン「!?」
スタンの手には差し入れのクッキーが。……それも食べかけの。口の周りには食べかすがたくさんついている。
ヒロ「……なるほど…」
スタン「……」
バレたか…!とでも言うような表情のスタンに、それを見つめるヒロ。しばらく無言で見つめあっていたが、ヒロが口を開いた。
ヒロ「もしかして、着いてきちゃったの?」
スタン「スタン〜…」
謝るような口調で答えたスタンに、ヒロは優しく笑いかける。
ヒロ「ふふっ、かわいいね。でも、こんな時間にいなくなったらAちゃんも心配するんじゃない?」
スタン「!!」
ふよふよと体を浮かせて、スタンはヒロのバッグの中へ入った。連れて帰れということなのだろう。
ヒロ「オッケー。じゃあ早めに帰ろうか。もう寝ちゃってるかもしれないけどね。」
最後に一言声をかけて、ヒロは楽屋を出た。
寮に戻ると、ほとんどの寮生達は寝ているため全体的に薄暗い。
2階に上がり、Aの部屋の前まで行く。
さすがにもう寝ているだろう。そう思っていたが、ドアの間から部屋の電気がもれていた。
静かにノックし、小声で名前を呼ぶ。
ヒロ「Aちゃん?起きてる?」
A「ヒロさん?…どうぞ。」
まさか起きてるなんて。心配で寝れなかったのかな。
部屋に入るとどこか暗い顔をしたAが床に座っていた。
A「あの、どうしました…?」
ヒロ「ごめんね、実は…」
「スタン!」
話すより先に、バッグからスタンが飛び出していった。
A「あ…スタン!」
ヒロ「ははっ、やっぱり心配だったよね。実は俺に着いてきちゃったみたいで、帰る前に楽屋で見つけたんだよ。ごめんね。」
A「そうだったんですか…あの…見つけてくれてありがとうございます。」
彼女は嬉しそうにお礼を言った。
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作者名:kiko | 作成日時:2018年7月1日 16時