page69 桜 ページ21
ーヒロsideー
朝食を食べ終わるとヒロはAの部屋に向かった。
ヒロ「Aちゃん。ちょっといいかな?」
声をかけても返事は帰ってこない。
ヒロ「Aちゃん…?」
ノックもしたがAの返事は聞こえない。思いきってドアをあけるとそこにはAの姿はなかった。
ヒロ「あれ、どこ行ったんだろ…」
寮の中をあちこち探す。食堂、庭、ベランダ…
しかしどこにもAはいなかった。
考え込みながらポケットに手を入れると何か硬い物にあたった。
ヒロ「…スマショ…」
連絡先をひらき、Aの番号を見つめる。
ヒロ「電話してみよう…」
番号をタップすると、プルル…と音がして電話がかかる。
「も、もしもし…」
ヒロ「Aちゃん?今どこにいる?今日のレッスンについて話したいんだけど…」
そう言うとAはしばらく黙ってから返答した。
A「…公園です。」
ヒロ「公園…ああ、あそこか。分かったじゃあそっち向かうよ。」
電話を切りそのまま公園に向かう。
歩いていくと、寮の近くにある公園に着いた。
奥の方にあるベンチにAを見つけて近づくと、Aもヒロに気がついた。
ヒロ「もー探したんだよ〜?なんでここに来てるの?」
A「……練習できるかなって思って…」
練習…とはプリズムショーのことかな?
そんなにプリズムショーを好きになってくれたのか…
ヒロ「そっかぁ。確かに広いしいいかもね。でも気をつけるんだよ。」
気をつける、とは寮生に見られないようにすること。聖さんの許可が出るまで姿を見せるのは控えた方がいいだろう。
ヒロ「それで、今日のレッスンだけど。どうする?新しい曲でやってみる?」
A「新しい曲…」
ヒロ「まぁやるかどうかはAちゃん次第だからね。考えておいてよ。」
にこりと微笑むとAちゃんも笑顔をかえしてくれた。
それはそうと、こんな公園に1人で来るなんて…何か考え事かな。
ヒロ「まだ、ここにいるの?」
A「……桜…」
ヒロ「桜?」
Aの向いている方向に目をやるとそこには桜の木があった。
ヒロ「まだ咲いてないよ?今は…あれ、もう3月かぁ…」
気がつくと月はもう3月になっていた。木もよく見ると桜の蕾がなっている。春の訪れを感じているのだろうか。Aはじっと木を見つめていた。
A「進級ですね。」
Aは学校に通っていないが、ヒロは迷わず返事をした。
ヒロ「うんそうだね。Aちゃんも中学3年生だ。」
そう言うとAは嬉しそうに微笑んだ。
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作者名:kiko | 作成日時:2018年7月1日 16時