page50 夜風 ページ2
ーAsideー
もうすぐ発表の日。Aは寮のベランダで外を眺めていた。
A「…(それにしてもずっと寮生に会わないなんてすごいなぁ…)」
エーデルローズの生徒達には会ってはいけないと言われているので毎日警戒しているが、全く顔を見たことがない。そろそろ少し気になってきた。
A「(いずれ挨拶することになるんだろうな)」
ベランダの風にあたっていると、何かを思い出しそうで思い出せない。ただ落ち着くという理由でよくここに来ていた。
「どうしたの?疲れちゃった?」
聞き覚えのある声に振り向くと、そこには
私服姿の速水ヒロがいた。
ヒロ「もう遅いしそろそろ寝たら?あまり夜風にあたりすぎると風邪をひくよ。」
この人はいつも昼間と夜とで少し表情が違う。
スイッチがoffになるのだろう。
A「…はい。わかりました。」
少し微笑みながら返事をし、部屋に戻ろうとしたとたんヒロに引き留められた。
ヒロ「ちょっと待って。」
A「え?」
ヒロはAの首もとをじっと見つめる。やがてAに優しく笑いかけた。
ヒロ「それ、まだ着けてくれてたんだね。」
Aの首にかかっていたのは、以前ヒロからもらったネックレスだった。
なんだか恥ずかしくなり目をそらす。
A「あ…はい………せっかくなので…」
ヒロ「あははっ嬉しいな。ありがとね。それじゃおやすみ。明日もレッスン頑張ろう。」
そう言うとヒロはひらひらと手をふりながら去っていった。
明日…は、衣装を着て流れを確認するんだっけ。
迷惑かけないように頑張ろうっ。
Aは自分の部屋に戻り、静かにドアを閉めた。
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作者名:kiko | 作成日時:2018年7月1日 16時