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其ノ参拾漆 ページ39

Noside

「……其方(そちら)もなんですね。」

『其方も……と云うことは、芥川にも尾行がバレてたのか。』

「みたいですね。
それに、芥川先輩も、Aさんに贈答品を買ってました。」

『そうか。』

「この後、如何します?」

『……………………』

涙香は、長らく考えた後、隣に立つAを見た。

少しの間の後、携帯の送話口を押さえ、

「Aは、如何してほしい?」

と、問うた。

「別に何方でも良いよ。」

Aは、本当にどうでも良さそうにそう告げた。

だが、少し考える素振りを見せて、

「まぁ、でも、そうだなぁ……」

と、わざとらしく口を開いた。

「この荷物、持って帰ってくれると嬉しいなぁ……」

Aの其の言葉に、涙香はショックを隠せなかったが、

「……わかった。」

仕方が無いと、諦めることにした。

再び携帯を耳にあて、樋口との会話を再開する。

『樋口、帰るぞ。』

「えっ?」

『兎に角、帰るぞ。芥川の荷物は、持って帰ってやれ。』

一方的に電話を切られ、樋口は茫然としていた。

「話は終わったか?」

「は、はい。」

「ならば、早く帰れ。
付き合わせた礼に、尾行に関しては不問にしてやる。」

芥川の言葉に、涙香から云われたことを思い返す。

「分かりました……芥川先輩。
この荷物は、私が運びます。なので……
先輩は、Aさんとのデートを続けて下さい。」

「……そうか。ならば、頼んだぞ。」

芥川は、そう云って、樋口と来た道を引き返した。

樋口は、その背に手を伸ばそうとして、思い留まった。



涙香と樋口は、ポートマフィア本部前で落ち合った。

「何故、芥川先輩とAさんのデートの尾行を中断したんですか?」

本部に戻り、長い廊下を歩きながら、樋口は涙香にそう尋ねた。

「尾行がバレていた時点で、もう駄目だったんだ。
あの後、尾行を続けたところで意味が無い。」

「でも、涙香さんだって気になるでしょう?」

「勿論だ。ただ、Aが帰るよう、俺に云ったから……
俺は、それに従わなければならない。」

悲しそうに目を伏せた涙香の姿を、自分に重ねてしまった樋口は、思わず涙香の手を掴む。

「涙香さん!お互いに頑張りましょうね!」

ただ、涙香の方は、

「あ、嗚呼。」

と返事をしながら、

「(何を頑張るんだ?…………仕事か?)」

などと考えていた。

無自覚とは、恐ろしいものである。

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舞花 ひめ(プロフ) - 櫻色華伝さん» コメント有難う御座います!涙香くん、可愛いですよね!私もデレデレしながら書いてます(( これからも頑張って更新させて頂くので、これからも宜しくお願い致します。 (2020年1月8日 10時) (レス) id: 56c3681e86 (このIDを非表示/違反報告)
櫻色華伝(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!夢主(私は累-かさね-ちゃんとしてます)LOVEの涙香くん可愛すぎる!応援してます。更新頑張ってください! (2020年1月7日 15時) (レス) id: bb11e6ace8 (このIDを非表示/違反報告)
舞花 ひめ(プロフ) - ▼とあるヰ琉兎さん» 有難う御座います!頑張って更新させて頂くので、楽しんで頂ければ幸いです!▼とあるヰ琉兎さんも、頑張って下さい!応援してます! (2019年4月3日 22時) (レス) id: 95f7a369ce (このIDを非表示/違反報告)
▼とあるヰ琉兎(プロフ) - 首領の意味深な発言や芥川との関係が良かったです!!この先どう進んでいくか気になります。更新楽しみにしてます!!これからも、応援してます(´ω`*) (2019年4月3日 21時) (レス) id: ff0f774975 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:舞花 ひめ | 作成日時:2019年3月1日 7時

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