となりの京本くん

47話 ページ47

・




｢あ！いた！慎太郎！｣




森本くんとトマトはなんで野菜なのか、熱い論争を
繰り広げていたところをジェシーくんの声がいとも
簡単に遮った。




｢お前、サボって佐倉さんと話してんじゃねぇーよ！｣

｢あは、バレちった｣

｢森本くん、なんか仕事あったの？暇なのかと思ってた｣

｢実は薪持ってこいって頼まれてたんだよね〜｣

｢女子たちが森本まだ？ってちょっとイラついてたよ｣

｢それはまずい！｣




森本くんは焦りの笑みをうかべて、じゃね！元気でね！
と、言い残して颯爽と去っていった。


私がわかりやすいくらい落ち込んでたから声かけて
くれたのかな…？

やさしいかよ、、！


優しさが身に染みるね。






・




皮を剥き終わった野菜を持っていくと、すぐに田中くんに
捕まった。




｢慎太郎と何話してたの？なんか仲良さそうだったじゃん｣

｢んー、いろいろあって相談を聞いてもらってた｣




ちらりと大我の方に目を配ると、こーちと結衣と一緒に
薪を入れていた。

田中くんに視線を戻すと、ぱちっと目が合って
たぶん大我のこと見てたのバレた。




｢それってきょもに関すること？｣

｢……｣

｢無言は肯定だって知ってる？｣

｢…田中くん、嫌い｣

｢俺は好きだよ｣

｢……｣

｢そこで黙るのやめれる？｣




なんかシュールすぎて笑いが込み上げてくる。

田中くんも目尻に皺を寄せて笑っていた。




｢ねぇ、そろそろ野菜切ろうよ｣




そう言って田中くんの横に入ってきたのは大我だった。

目は合ったけど、すぐそらされてしまった。


なんかデジャブ…。

あれか、始業式のときもこんなことあったな。




｢ごめんごめん、すぐ切るから。きょもも一緒に切る？｣

｢俺の包丁さばき、やばいよ？｣

｢なんでそんなドヤ顔なの！｣

｢すごすぎて顎外れちゃうぜ？｣

｢ははっ！｣




私の横で楽しそうに会話をする二人。

今だけ田中くんになりたい……。


田中くんになったら、あの楽しそうな顔を向けて
もらえるんでしょ？






・

終わり ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)

←46話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す