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田中先輩の謎の絡みを無視して、私たちより先。クラゲの水槽をみてた大我先輩に声をかけた。
「クラゲ、綺麗ですね」
「こいつら足絡まってる」
「……ほんとだ、とれるのかな。これ」
細長い水槽の中でゆらゆらと動くクラゲ、「もげたりしませんかね」なんてつまらない疑問を口に出してしまう。「とれても平気なんだってさ」ってクラゲを見たまま、先輩が呟いた。
なんか似てる。…クラゲと先輩。ふわふわ佇んでる感じも、掴めない感じも。すごく。水槽越しにみつめる綺麗な顔も。
クラゲをじーっとみつめる先輩からそっと離れて、近くの水槽にいたカラフルな魚を写真に収めた。あ、イソギンチャクに隠れてるの可愛い。周りに人がいないのを確認してしゃがみこんで写真を撮ってみる。
「ふまれるよ、そんなかがんでたら」
「………無言で背後に立つのだめです」
「注意喚起」
そんな風にバカにしたくせに隣に屈んで「可愛い、顔だけ出してる」って嬉しそうに笑った。
「クラゲ、見終わっんですか?」
「……あ、こいつシマシマじゃん」
「……この子はドットですよ」
大我先輩のスルーにももう慣れたものだ。犬や猫にするみたいに水槽の前で「こっちだぞー」とかやってるのもスルーできる、うん。
「小さい魚はみんなニモなの、俺」
「……それ可愛いアピールですか」
「は?可愛くねーだろ。ニモっぽいじゃん、見分けつかないし」
「理由がやばいですね、…私もオレンジのはみんなニモですけど」
じゃあAも可愛いアピールしてんの?なんて意地悪く聞きながら立ち上がった先輩。ブーメラン。まさしくそれ。
「……2人じゃやだった?」
随分唐突な問い掛けだった。私を見下ろす先輩はどこか不安そうな表情で、なのにストレートな言葉をぶつけるから私まで緊張するの。変に。
「………やじゃないです、よ」
本心なのに、変な間を開けてしまった。目の前の大我先輩も微妙な表情で。こんな時に焦って上手いこと返せない自分が本当にやだ
「Aー!!!みて!ニモー!」
「しんたろ、…あ、これ本物のニモだ」
変な空気を壊して、私の手を引いて映画で見た小さい魚の前に連れてきた慎太郎。「ニモ飼いたいわ…」って癒されてる。
「……さっきのニモじゃないの?」
「ちげーって!色しかあってないじゃん」
「慎太郎に言われるとむかつくね」
なんでだよおー!って揺さぶられるけど、むしろ私が聞きたい。
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Nappy(プロフ) - 素敵な作品ですね! (2021年11月21日 21時) (レス) id: 6b7a5f4d24 (このIDを非表示/違反報告)
キミ(プロフ) - いけない時間から1を読み始めたら深夜を過ぎて一気読みです!仕事かうまくできるか不安でしたが、感情を揺さぶられて、涙するお話が読めたので、心は満足です!続きを楽しみにしてます! (2021年11月18日 1時) (レス) id: d4e3c92b39 (このIDを非表示/違反報告)
やん - 沢山更新嬉しいです!!!!!!日々の楽しみです^ ^ (2021年11月8日 0時) (レス) @page25 id: a4d97af994 (このIDを非表示/違反報告)
華恋(プロフ) - このお話の京本くん好き過ぎます。どのお話も大好きです。更新頑張ってください⚐゙ (2021年11月7日 21時) (レス) @page20 id: 2b37390e07 (このIDを非表示/違反報告)
はる(プロフ) - だめだ。あまりにも好きすぎる。 (2021年11月7日 19時) (レス) @page20 id: 5f27ff9118 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まめこ | 作成日時:2021年11月4日 20時