幹部は彼女を甘やかし隊2【d! / all】

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暗くなってきた森をひたすら走り抜ける。白いワンピースが茂みで汚れていく。せっかく選んでくれたものなのに…ごめんなさい。

駆け抜けた先には小さな小屋があって、中を伺って誰もいないのを確認し扉に手を掛ける。

すると背後に気配を感じたので咄嗟に先程手に入れた短剣を手に振り返る。

「…流石A様」
『…ネム』

変装を解いたネムがへらりと笑う。ナイフを下げてその胸に飛び込めば懐かしい匂いと温もりに包まれた。

「お久しぶりです」
『うん…』
「積もる話もあると思いますが今は怪我の手当をしましょう」

ゆっくり体を離したネムが額の傷にそっと触れる。タンコブになってるそこに触れられ痛みで体が小さく跳ねた。

「そこの小屋は貯蔵庫です。明日の昼まで誰も立ち入らないでしょう」

服や医療道具も用意してあるので、とネムは小屋へと促した。大人しく従い用意されたフード付きのコートとブーツ、短パンを身につけ短剣を太もものホルスターに差し込んだ。

そのまま大人しく治療を受け頬に湿布、額に包帯を巻かれ手渡されたパンと干し肉を受け取り有難く口をつけた。

「こんな粗末なものですみません」
『そんな事ない。ありがとう』

それだけの静かな空間。最後の一口をごくんと飲み込めばネムはゆっくり口を開いた。

「…A様」
『うん？』
「私はこのまま他国へと向かおうと思います」
『…理由は？』
「…」
『…生きて帰ってくる？』
「…」

理由を言わず言葉を濁すように笑うネムに瞬時に悟る。

私を狙った国に復讐でもするつもりなのだろうか。

『…わかった』

無理だけはしないで、と言えば彼は小さく頷き頭を下げる。

すると突然闇夜に国内通信が響き渡り、私たちは慌てて小屋の外へと出た。

『こんな深夜に何？』
「…総統による国内通信の様です」
《____やぁ諸君、深夜にすまない》

虚空に浮かぶ映像にはグルさんが映し出されており、机の上で手を組んでおりにっこりと笑っていた。

《国民の皆に知らせる事がある。明日、丸一日を使って幹部と仲間の1人と鬼ごっこを国内で開催することにした》
『は？』
《参加するのは我々幹部と仲間のAだ》
「これは…成程」
《制限時間は1日。彼女が逃げ切るか、幹部達に捕まるか、その全てを己の目で見届けるのだ》

いい笑顔をするグルさんに思わずため息をつく。
あぁ、そうだったね。貴方はそういう人だった。

「…ご武運を」
『はぁ…』

あの人ら、私を手放す気無いな？

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