［２−３］ ページ13
智side
「大丈夫、そんなしんどいことしない。
会社行って打ち合せするだけだから」
俺の考えを読んでいるのか
ニコッといつもより小さい笑顔を浮かべる翔。
「いつもより早く終わるから
無理することもないよ」
「でも」
「俺ね、最近あんまり会社行けてないの。
だから色々報告もあるし……お願い行かせて？」
ダメ押しとばかりに俺の顔を覗き込んで
お願いしてくる翔に苦笑いが浮かぶ。
俺としては、出来れば休んでほしい。
だって無理するに決まってるから。
けど薬が効いてくればある程度動けるし、
それに仕事に行きたいっていう
翔の気持ちも十分に分かるし……
「んー……」
悩ましげに声を出しながら
翔の顔をもう一度よく観察する。
貧血はなにも絶対に無理って訳じゃないから
見定めが難しい。薬飲んでると余計に。
どうしようかな。
俺の考えてること、悩みが分かるのか、
翔は困った顔をして追い打ちをかける。
「さっき薬飲んだ、家出るまで寝とく、
仕事行く、なるべくすぐ帰る。……ダメ？」
そこまで行きたいのか、ってくらい翔は
簡潔に理由を述べて俺を説得し始めた。
悩むふりしたって反論する気満々だし。
目が諦めようとしてないもん。
普通に病人だからねあなた。
でもダメだな……
こうなったら絶対に聞かないやつだ。
こっちがちょっと折れるしか……ないかなぁー……
「……会議終わったらすぐ帰るって、
ちゃんと約束出来る？」
「もちろん！」
「上司の人に呼び止められても、
手伝ってって言われてもちゃんと断って帰れる？」
「……うん。帰る」
「今の間はなに」
「もう大丈夫だって、本当に帰るよ」
今。
ちゃんと頷き直したけど絶対迷ったよね？
時間ないからお願いって頼まれたらって
思ったら断れる自信なかったね？
じろりと目を利かせれば
肩をすくませて知らないと顔を背ける翔。
このワーカホリックめ……
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作者名：あやりゅ。 | 作成日時：2019年6月19日 0時
