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｢ねぇねぇ！走る？走らない？｣
｢走んないよ！こけるよ？笑｣
夕焼けに少し染まった海。水族館から近くにある海。
｢なんか深田と海って嫌だなー笑｣
｢なんでそんなこと言うん！｣
｢だって。本当に前の傷ついたもん、｣
そういう彼女の目は本当に悲しそうで、少しだけまた心が傷んだ。
｢深田！きてきて！｣
ぼーっとしてたら呼ばれた名前に彼女の元に駆け寄ると夕日が海に沈もうとしている。
｢綺麗だね｣｢そうだね｣
｢深田との思い出って一生消えないんだよね、｣
そう呟いたAの言葉をずっと俺の耳に入ってきたけど深くは聞けなかった。いや、聞いていけないと思った。
その横顔があまりにも消えそうで、儚かったから。
｢深田さ、｣
｢それ、やめない？｣
俺が思わず言葉を発したらなに？と言わんばかりにこっちを見つめてくるA。
｢苗字呼び卒業して欲しいんだけど、｣
｢もう深田で定着しちゃってるんだもん｣
｢俺はAって呼んでるじゃん｣
｢最初からじゃん｣
そう口を尖らせるAはなんだか小さい子みたいでちょっとだけ笑っちゃった。
｢ねぇ！笑わないでよ、竜生のばか！｣
｢え！え！今呼んだよね！？顔赤いよ？？｣
｢夕日が赤いからでしょ！竜生帰るよ｣
1人でパニックになってる俺を他所に手を差し出してくるAはやっぱり俺の上手でAには叶わないなって。
ただ言えることは俺今が1番幸せだし、
もう離さないって決めたから。
Aと過す時間を大切にしたい。
俺よりもひとまわり小さな手をしっかりと握った。
そしてポケットで震える携帯には知らないフリをした。
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作者名：にゃん | 作成日時：2023年3月23日 18時
