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その日の夜、私はベッドに仰向けになり、やりきれない気持ちを消化しようとしていた。
なんであの人は私を知ってるの?
どうして必死に力を込めたの?
その、こちらまで胸が締まってしまうような表情の意味は。
私は大きくため息をつき、飢えた脳に酸素を取り込む。
「うう〜モヤモヤする!小さい頃会ってたとか?」
いや、あの人……ハンジさんは、かなり確信を込めた声で名前を呼んだのだ。
当然成長したし、メイクだって覚えたのに、久々に会う私を見抜けるとは思えない。
頭の中を検索しても徒労に終わる。
私は掴まれた手首を撫で、昼の出来事を回想する。
『私の名前はハンジ・ゾエ。…よろしくね、A』
「……手、温かかったな」
哀願ともとれる張りつめた表情。あの人の真意はなんなのだろうか。
ぼんやりしたまばたきにも複雑な思考にも疲れ、私はつい目を閉じてしまう。
もう眠ろう。人の心など考えてもわからないのだ。
健気に回る換気扇の音に耳を澄ませていると、パッと枕元で何かが光り、軽快な電子音が私の心を揺らした。
私は勢いよく起き上がり、緑色の通知が残るスマートフォンを見つめる。
どうしよう。
不思議なほど跳ねる心臓が痛い。じわじわと頭が覚醒していく。
「びっくりしてるだけ、それだけ…だよね」
誰に向けるでもない問いかけが暗がりに虚しく響いた。
液晶を押すと、瞬時にトーク画面に切り替わる。
『今日は本当にごめん』
『お詫びにお昼ごちそうしたいんだけどどうかな』
思いの外丁寧な文体に驚く。
今日の騒ぎからして、もっと勢いよく距離を詰めてくるかと思っていた。
一瞬、二人きりになっていいものかという考えがよぎる。
しかしそれを打ち消すほどに、彼女の行動や言葉の意味を知りたいと思ってしまった。
このままにしてはいけない。
彼女と会わなければいけない。
……一体この衝動はなんなのだろうか。
『いえ!じゃあ明日はどうですか?早すぎますか』
気づけば私はキーボードを打っていた。
しゅぽ、と間の抜けた音とともに、すぐに返信がくる。
『明日は私も休みだし丁度良かった。何か食べたいものはある?』
夢をみているような変な気分だ。
私は『お任せします』とだけ返し、再度ベッドに寝転がる。
この高揚の理由も、あなたに聞けばわかるのでしょうか。
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匿名名無し - 綺麗な文章で読みやすかったです。新作楽しみにしています (2021年5月5日 21時) (レス) id: 9083184134 (このIDを非表示/違反報告)
べりる(プロフ) - いんこぷりんさん» 私も!いんこぷりんさんが大好きです!!こちらこそ応援してます、今度は私がいんこぷりんさんの作品にコメントしに行っちゃいますね(..*) (2020年12月2日 17時) (レス) id: d7350d4092 (このIDを非表示/違反報告)
いんこぷりん(プロフ) - べりるさん» お互い強く生きていきたいですね…!わー!そうなんですか!キュンキュンして頂きありがとうございます!(感涙)本当にべりるさん大好きです…!これからも応援してます!(*^^*) (2020年12月1日 21時) (レス) id: a01a78f710 (このIDを非表示/違反報告)
べりる(プロフ) - いんこぷりんさん» う〜〜〜温かいお言葉ありがとうございます…染み渡ります…TT いんこぷりんさんもよくぞご無事で!!(?)ずっといんこぷりんさんの作品拝見してます。どんなネタでもキュンキュンで、最っ高です…。私も久しぶりにお話しできてうれしいです! (2020年11月30日 20時) (レス) id: d7350d4092 (このIDを非表示/違反報告)
いんこぷりん(プロフ) - やっぱりべりるさんの作品は本当に最高です!私も本誌の展開でかなり落ち込んで泣いたりしてました…。なのでべりるさんの事もとても心配していました。久しぶりにお見かけ出来て良かったです!嬉しいです! (2020年11月30日 10時) (レス) id: aafc5c7127 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:べりる | 作成日時:2020年5月4日 16時