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匂いをたどっていくと、一つの部屋にたどりつく。その部屋はジョンが仕事の際に使用していた部屋であった。ジェベリアは三回ノックをしてみたが、返事はなかった。しかし物音はした。
「ダーリン、いるんでしょう?」
ジェベリアは声をかけた。いるのなら開けろ、と言外に。
「……天使ちゃん?ああ、悪いね天使ちゃん。今は放っておいてくれないかな」
ジョンはそう言ったが、ジェベリアはその言葉を無視をしてドアを開けた。自分が来たのに歓迎されなかった事に不満を覚えたのである。
その部屋にジョンはいた。椅子に座り机に突っ伏していた。顔は見えない。だが、ジェベリアには何となく、彼の情緒が平常とは異なっているというのは察せられた。
ジョンは伏せていた顔をこちらに向けた。鈍い色の瞳がジェベリアをとらえた。が、すぐにその目はそらされた。これもまた、ジェベリアにとって不満であった。
「……どうしてそんな格好をしているのかな」
「え?……ああ、これね」
ジェベリアは今自分が人間の全裸のような姿をしていると思い出した。皮膚を動かして、服のように見せかける。
ジョンは一向に動かない。机に伏している。ジェベリアはさすがに不審に思った。彼もまたエルシャ神により生まれ変わらされていると聞いたが、もしかしたら何かしらの不具合があったのかもしれない。ジェベリアは理性もなく暴れ、血を吸い続けていた事を思い出した。
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夜(プロフ) - 素晴らしいお話、ありがとうございます。楽しみに待っています (2021年7月22日 13時) (レス) id: 1f55a4bce5 (このIDを非表示/違反報告)
つーちゃん - ください (2021年7月4日 14時) (レス) id: 84f4461b32 (このIDを非表示/違反報告)
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