人工物、あるいは人ならざる者 (ページ42)

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外伝28 ページ42

ソファに座り、本を読むジョンの太ももにジェベリアは顎を乗せる。ちらりと彼女を一瞥したがそれだけで、ジョンは気にした様子もなく本を読んでいた。

　だがジェベリアが挑発するような、甘ったるくわざとらしい猫なで声でにゃあおと猫の鳴き声を真似ると、ジョンはおかしそうにくすりと笑った。

「子猫ちゃんは甘えたがりだねぇ」

　本を持つ手はそのままに、もう片手でジェベリアの頭を撫でる。男性的で大きな手に撫でられる事がジェベリアには心地良いようであった。ジョンの体温を、頭から感じる。嬉しいのだろう、ジェベリアの端麗な、ともすれば冷たさも感じられるような顔は少しだけふにゃりと崩れた。

　ジョンは本を読み進める。ジェベリアの頭を撫でるだけにとどまらず、彼女のぴんと尖った長い耳の先端をくにくにと指でつまんだり、喉を指でつぅっとなぞったりする。はじめのうちこそくすぐったそうにしていたジェベリアであったが、段々とその呼気には熱がこもっていった。ジェベリアはお願い、やめて、助けて、と消え入りそうな声で言うが、ジョンは本を読むのに集中していて気付かない。

　ジョンがジェベリアに気付いたのは、本のあとがきを読み進めようとした時だった。顔が赤く、息も荒い。疲れているかのようにぐったりとしている。何があったのかをすぐに察したジョンは、ちょっとしたいたずらをしてみる事にした。ゆっくり彼女の耳元に顔を寄せて、優しく、熱っぽく囁いてやる。

「ジェベリア」

「……ぁ」

　ジェベリアはぴくりと痙攣した。涙に濡れた目でジョンを睨みつけながら、しかし口元からはだらしなく唾液が一筋伝っている。小さな声で、ジェベリアは抗議した。

「ダーリンったら、本当に意地悪ね……私が名前呼ばれるの弱いって、知ってるでしょ……？」

「おや、天使ちゃんは名前を呼ばれるだけで興奮するのかい？」

「とぼけるのはやめてよね……」