外伝22 ページ36
「どうしたの天使ちゃん?」
ジョンは笑みこそ浮かべてはいるが、かなり困惑していた。
やけにジェベリアの気が立っているのだ。
いや、それ自体はそこまでおかしくない。問題はジョンにその心当たりが一切ない事だった。だがジョンに原因があるわけではない。少なくとも、ジョンはいつもの通りに接していた。
「……」
ソファに座っているジェベリアはちらりとジョンを見た。が、すぐにふいっとそっぽを向く。正直、こういう時は放置しておきたい。だがそうしたら後で文句を言われるのは確実だろう。かといって構おうとしても追い返されるだろうし。
どうしようかとコンマ数秒のわずかな時間ジョンが考え込んでいたら、ジェベリアがジョンを呼んだ。
「ダーリン」
「何?」
「ちょっと近くにいなさい。良いでしょ」
何かを押し殺したような、少し震える声だった。
言われるがままにジョンはジェベリアの隣に座る。ジェベリアはジョンの腰を抱き軽く自身の方へと寄せた。大きな翼でジョンの半身をふわりと包みながら。ジェベリアは何も言わない。ジョンも何も言わなかった。彼女の好きにさせようかと思ったのだ。
どれだけ時間が経ったろうか。
気が付くと、ジェベリアはすぅすぅと寝息を立てていた。落ち着いたら眠くなって、そのまま眠ってしまったのだろう。ジェベリアを起こしてしまわないようにジョンはゆっくりと腕や翼をどかし、脱出を試みた。
「いや」
だが、眠っているはずのジェベリアがそう言った。起きているのだろうか?そう思い様子を見るも、どうやら本当に眠っているようだ。寝言、らしかった。
ジェベリアは小さな呻き声をあげ、そして一筋涙を流した。
「いや、おいていかないで……」
「……」
何かにひどく魘されている。縋るように、か細い声で嘆願する妻の手を振り払うつもりは、少なくとも今の彼にはないようだった。
4人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夜(プロフ) - 素晴らしいお話、ありがとうございます。楽しみに待っています (2021年7月22日 13時) (レス) id: 1f55a4bce5 (このIDを非表示/違反報告)
つーちゃん - ください (2021年7月4日 14時) (レス) id: 84f4461b32 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ