外伝16 ページ30
ジェベリアはあの日の感覚が忘れられずにいた。拘束され、命の危機を感じたあの感覚。いつでも自分を殺せる夫の視線に、彼女はときめいていた。足で踏まれ、そしてそのまま人間でないかのように放置されたあの時、えもいえない快感を見いだしたのである。彼女はマゾヒストであった。
あれと同じような事はされていない。おそらく、頼めばしてくれるだろう。だが、そうするには対価が必要だ。しかし彼女は彼が何を望むか分からなかったために、その対価を用意できなかった。
「というわけなんだけど」
「帰ってもらえる?」
友人のマロモ……がいなかったので、マロモの娘のミカエラに相談したら開口一番にそう言われた。
「母さんに頼んでちょうだいよそういうのは。普通友人の娘にそういう事を聞く?」
「いや、だってあいつの子供だったから……」
「いくら母さんが変態だからって私までそうだと思われるのは嫌よ。具体的に言うならあるはずのない感情が生まれてくるくらい嫌」
「おめでとうございます、元気な女の子ですよ」
「嫌だっつってんだろ」
白髪を手で整えながら、ミカエラはその端麗な顔にしわを寄せる。ジェベリアは出されたお茶を飲みながら、クッキーを食べた。
ジェベリアはジョンへ差し出す対価について考えていた。中途半端な対価を差し出したくはない。なるべくジョンが好ましく思うようなものを差し出したいが、ジェベリアはジョンの好みを知らなかった。
「ダーリンの好みとか知らない?」
「知らないわよ……あなたこそ知らないの?」
「……私、とか?……そうね、私か」
ジェベリアは首を傾げた。ジョンが好むものをあまり知らない。そもそも、彼が本当に自身を好んでいるのかすらジェベリアに確信がなかった。
が、ジェベリアは何か思い付いたようだ。
「ありがとうマロモ、やり方を一つ思い付いたわ」
「どういたしましてジェベリア。こういう相談は今後は母さんにしてよね」
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夜(プロフ) - 素晴らしいお話、ありがとうございます。楽しみに待っています (2021年7月22日 13時) (レス) id: 1f55a4bce5 (このIDを非表示/違反報告)
つーちゃん - ください (2021年7月4日 14時) (レス) id: 84f4461b32 (このIDを非表示/違反報告)
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