外伝8 ページ22
ジェベリアは目が覚めると、自身の肩に重みを感じた。見れば、ジョンが自分に寄りかかるようにしてすやすやと眠っている。どうやら、ソファでくつろいでたら一緒に眠ってしまったらしい。
ジェベリアはおかしそうに笑いながら夫を起こそうとしたが、ふとひらめいて、それをやめる。なるべくジョンを起こしてしまわぬよう慎重に動いて、ジョンと向かい合うような姿勢になる。
ヒトの皮をかぶって作られたその端正な顔を指で撫でる。ジェベリアは軽く匂いを嗅いでみた。煙草の匂い、薬品の匂い、服の柔軟剤の匂い。一緒に眠っていたからしみついたのだろうか、ジェベリアのつけていた香水の匂いもする。そして、それらに混じってごくわずかに、ジョン本来の匂い……泥や、何かの腐った匂い、生臭い匂いもした。
ジェベリアはすんすんと匂いを嗅ぐ。ジェベリアは自身の嗅覚に感謝した。匂いに包まれると、全身が多幸感に満たされるかのようだった。うっとりしながら、ジョンの首筋に顔を沈ませる。首元を舐め、ジェベリアはジョンの匂いを自身にしみこませるため、あるいはジョンに自身の匂いをしみこませるために、身体をよじらせてすりつける。
「……天使ちゃん?」
声がして、見ると、ジョンはいつの間にやら目を覚ましていた。笑みを浮かべてこそいるものの、驚いたのであろう、その表情はやや固かった。何をしているんだい?顔にそう書いてあったのを見て、ジェベリアはくすくすと笑った。
「あら、おはようダーリン。素敵な寝顔だったわよ」
「匂いを嗅いでたの?」
「いいえ?」
「いや、嗅いでたよね?」
「いいえ?」
「そっかぁ……」
ジョンは言った。納得してはいないが、聞いても答えないだろうと諦めたのだろう。ジェベリアは可愛らしい声で笑った。
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夜(プロフ) - 素晴らしいお話、ありがとうございます。楽しみに待っています (2021年7月22日 13時) (レス) id: 1f55a4bce5 (このIDを非表示/違反報告)
つーちゃん - ください (2021年7月4日 14時) (レス) id: 84f4461b32 (このIDを非表示/違反報告)
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