検索窓
今日:28 hit、昨日:3 hit、合計:3,872 hit

外伝8 ページ22

ジェベリアは目が覚めると、自身の肩に重みを感じた。見れば、ジョンが自分に寄りかかるようにしてすやすやと眠っている。どうやら、ソファでくつろいでたら一緒に眠ってしまったらしい。

 ジェベリアはおかしそうに笑いながら夫を起こそうとしたが、ふとひらめいて、それをやめる。なるべくジョンを起こしてしまわぬよう慎重に動いて、ジョンと向かい合うような姿勢になる。

 ヒトの皮をかぶって作られたその端正な顔を指で撫でる。ジェベリアは軽く匂いを嗅いでみた。煙草の匂い、薬品の匂い、服の柔軟剤の匂い。一緒に眠っていたからしみついたのだろうか、ジェベリアのつけていた香水の匂いもする。そして、それらに混じってごくわずかに、ジョン本来の匂い……泥や、何かの腐った匂い、生臭い匂いもした。

 ジェベリアはすんすんと匂いを嗅ぐ。ジェベリアは自身の嗅覚に感謝した。匂いに包まれると、全身が多幸感に満たされるかのようだった。うっとりしながら、ジョンの首筋に顔を沈ませる。首元を舐め、ジェベリアはジョンの匂いを自身にしみこませるため、あるいはジョンに自身の匂いをしみこませるために、身体をよじらせてすりつける。

「……天使ちゃん?」

 声がして、見ると、ジョンはいつの間にやら目を覚ましていた。笑みを浮かべてこそいるものの、驚いたのであろう、その表情はやや固かった。何をしているんだい?顔にそう書いてあったのを見て、ジェベリアはくすくすと笑った。

「あら、おはようダーリン。素敵な寝顔だったわよ」

「匂いを嗅いでたの?」

「いいえ?」

「いや、嗅いでたよね?」

「いいえ?」

「そっかぁ……」

 ジョンは言った。納得してはいないが、聞いても答えないだろうと諦めたのだろう。ジェベリアは可愛らしい声で笑った。

外伝9→←外伝7



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 7.3/10 (18 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
4人がお気に入り
オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - 素晴らしいお話、ありがとうございます。楽しみに待っています (2021年7月22日 13時) (レス) id: 1f55a4bce5 (このIDを非表示/違反報告)
つーちゃん - ください (2021年7月4日 14時) (レス) id: 84f4461b32 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ミクミキ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2021年5月28日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。