人工物、あるいは人ならざる者 (ページ19)

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外伝5 ページ19

「七夕ねぇ……」

　ジェベリアがその行事を知ったのは本当に偶然だった。談話室の本に、地球という星の文化が記されており、そして今日は七夕と呼ばれる日なのだと知ったのだ。

　ソファに腰かける夫の膝の上に座り、彼にその本の内容を見せる。彼も知らなかった文化であるようで、ふぅんと相槌を打ってそう呟いたのだった。

「天使ちゃんは願い事、あるの？」

「ないわね」

「そう」

　ジェベリアは特に願う事もなかった。結婚する前にはあれほどに高かった承認欲求も、今ではすっかりなくなっているかのようだった。それは夫が傍にいるからであるとジェベリアは既に気付いていた。

「願うとするなら、ダーリンが私の隣にいる事かしら。けど、そんなの当たり前の事でしょ？」

「そうだねぇ」

　まるで子猫を見守るような目線でジョンは言い、ジェベリアの顎を軽く撫でる。小動物を愛でるかのようなその仕草に、しかしジェベリアはうっとりとしながら笑う。

「あ、でも……もっと構ってくれたりしてほしいって願うかもね」

　身体をよじり、ジョンと向かい合う形になる。豊満な乳房をぐいと押し付け、劣情を誘うかのように上目遣いにジェベリアはジョンを見つめる。

「こら、まだ会社だよ？家に帰ったら可愛がってあげるから」

「はぁい、約束よ？」