144話 ページ48
.
今日は当直ではなかったため、帰宅準備を終えた僕は帰ろうとしていた。
ポケットを探ると、"お願いごと"を書いた紙がひっそりと自身を主張している。
僕は少しだけ微笑んで"お願いごと"のカードを取り出した。
...そういえば、伊東さんは何かお願いごとをしたのかな...
五十嵐「.....」
彼女にとっての"お願いごと"とは一体何なんだろう。
幼くして才能を開花し、医師の最前線を走る彼女の"お願いごと"。
両親を早くに亡くし、飛び級を繰り返した彼女はきっと"子ども"として扱われる機会は少なかっただろう。
"大人"であることを"大人"から望まれ、また完璧であることを望まれてしまった伊東さん。
僕に伊東さんの"お願いごと"はわからないけど、彼女を支えることはきっと出来るはずだ。
でも、何故なんだろう。
こんなにも彼女を支えたいと思ってしまうのは。
こんなにも彼女の傍にいたいと思ってしまうのは。
.
ふと、視線を上げるとエスカレーターを登る伊東さんの姿が目に入った。
思わず"伊東さん"と呼びそうになってしまうが、ここはエントランスだ。誰が聞いているかわからない。
五十嵐「安藤先生!お疲れ様で.......?」
彼女の様子がおかしいように見えた。
顔を顰め、僅かに前屈みになっている。
次の瞬間、僕は目を見開いてビクリと無意識的に反応してしまった。
五十嵐「伊東さんッ!!!!」
鈍い音を立てて、彼女は床へ叩きつけられた。
気付いた時にはもう走り出していた。
リュックサックを投げ捨て、彼女の元へ駆け寄り、肩を揺する。
五十嵐「...伊東さん?...伊東さん!?.....伊東さんッ!!!!」
ーーーーーーパサリ、と枯葉が落ちるように、2人の"お願いごと"が書かれたカードが重なった。
"ずっと一緒に働けますように"
そんな2人の願いとは裏腹に、Aの身体はピクリとも動かなかった。
.
920人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
奏奏奏(プロフ) - きぇぇぇぇ!!さん» ありがとうございます!これからも頑張っていきます! (2019年7月30日 18時) (レス) id: 681665cbc9 (このIDを非表示/違反報告)
奏奏奏(プロフ) - レナさん» ありがとうございます!励みになります´`* (2019年7月30日 18時) (レス) id: 681665cbc9 (このIDを非表示/違反報告)
きぇぇぇぇ!! - ラジエーションハウスは大好きな作品(?)なので頑張ってください!(?) (2019年7月30日 17時) (レス) id: 5d428d39a9 (このIDを非表示/違反報告)
レナ - 待ってました。これからも頑張ってください。 (2019年7月16日 22時) (レス) id: 869c734d75 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:奏奏奏 | 作成日時:2019年7月16日 19時