118話 ページ22
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気が付けばわたしは父方の祖父母へと引き取られていた。
当然学校などあれから一度も行っていない。行く気になどなれなかった。
祖父母はどうにかわたしに元気になってもらおうと、色々としてくれていたがわたしは何も反応を示さなかった。
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A「...なに、これ。」
そんな虚無の渦中だったある日、ふとわたしは1枚のディスクを見つけた。
わたしはそれのトレイを開け、ディスクをパソコンへと飲み込ませる。
A「...!.....これ...お母さんの...」
画面に表示されたのは、母のマンモグラフィ画像だった。
かつての担当医がセカンドオピニオンのためにかデータを焼いて渡してくれていたのだ。
わたしはその画像を見つめた。
見つめ続けていると再び涙が込み上げてきそうになったが、ガンのしこり部分に酷い違和感を覚え、衝動的に立ち上がった。
わたしは祖父の部屋へ走り、分厚い医学書を引っ張り出して自室へと急ぐ。
そして乳ガンについて書かれているページを開け、どんどんとページをめくり続けていく。
A「ーーーーえ、」
わたしはとあるページを見つけ、硬直した。
Radical Sclerosing Lesions(繊維が主体化の病変).....RSL.......?
特徴的な構造が浸潤ガンに類似する.....大きな病変に対してはComplex Sclerosing Lesionと呼ぶことを推奨する.....
難しい漢字が並んでいたが、わたしはひとつひとつ辞書で調べて理解した。
辞書を閉じたその時には、わたしの口からは乾いた笑い声が漏れ出していた。
A「...は、...あは は.....お母さん、ガンじゃなかったんだ。」
分厚い医学書へボトボトと涙が落ちていく。
わたしは泣き疲れてそのまま眠ってしまうまで、ずっと涙の雨を降らせ続けた。
両親を医者に殺 された、それも放射線科医に。
尊敬していたはずだったのに、なりたいと思っていた放射線科医に家族を殺 された。
わたしはその時決意する。
お父さんとお母さんを殺 した放射線科医になること。
そして、医学界を変えることを。
わたしは.......私は、あの瞬間から"悲劇の秀才"になった。
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奏奏奏(プロフ) - きぇぇぇぇ!!さん» ありがとうございます!これからも頑張っていきます! (2019年7月30日 18時) (レス) id: 681665cbc9 (このIDを非表示/違反報告)
奏奏奏(プロフ) - レナさん» ありがとうございます!励みになります´`* (2019年7月30日 18時) (レス) id: 681665cbc9 (このIDを非表示/違反報告)
きぇぇぇぇ!! - ラジエーションハウスは大好きな作品(?)なので頑張ってください!(?) (2019年7月30日 17時) (レス) id: 5d428d39a9 (このIDを非表示/違反報告)
レナ - 待ってました。これからも頑張ってください。 (2019年7月16日 22時) (レス) id: 869c734d75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奏奏奏 | 作成日時:2019年7月16日 19時