116話 ページ20
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父「A、お誕生日おめでとう!」
A「...えへへ、ありがとう!」
朝、ダイニングテーブルへと向かうと父が1つの箱を手渡してきた。
A「...開けていい?」
「もちろん」と父は応え、わたしはリボンを丁寧に解き、ゆっくりと箱を開けると、中から可愛らしいクマのぬいぐるみが顔を現した。
A「わあ...!すごく可愛い!!お父さんありがとう!」
そう言うと父は微笑み、ソファで座る母を指して囁いた。
父「これはお母さんが選んでくれたプレゼントなんだぞ。」
A「...!」
わたしはそれを聞くと、たっと駆け出して母へ近付き頬を緩めた。
A「お母さん、ありがとう!」
母「.....!」
すると母は小さく反応を見せた後、少しだけ笑みを見せて私の頬を撫でた。
この時、わたしは妙な違和感を感じたが気のせいだろうとその思考を振り払った。
...お母さんが、怖い、だなんて。
そんなこと有り得ないでしょう?
父「...よし、じゃあ一緒にケーキを作ろうか。」
A「.....うん!」
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父「えっと.....A小麦粉とってくれる?」
A「はーい。」
父「あとは...泡立て器か、確か奥にしまってあったよな...ちょっと持ってくるよ。」
A「わかった。」
タブレット端末を置いて、廊下の物入れへ向かった父から視線を外し、なんとなく母へと向ける。
わたし達の様子を遠くからぼんやりと見つめていたのだろうか。
わたしはちょっとでも楽しい気分になってもらいたくて、母へ微笑み手を振ってみせる。
すると、おもむろに母は立ち上がり、ポタリと涙を落とした。
A「お、母さん...?」
ゾクリ、と背筋に何かが走った感覚がした。
お母さんが、おかしい。
いつもと、比べ物にならないくらい。
母「...ごめんね.....もう、苦しいの。幸せな.....この時間が...」
そう言って、母は歩き始める。
どこに行こうとしているの?
...ねぇ、お母さん、その先は何もないんだよ?
どこに行くの、ねえお母さーーーーー
母「A...ごめんね.....」
わたしは抱えていたボウルを投げ出して叫んだ。
そして走った。
A「お母さんッ!!!!」
叫び声は虚しくも雲一つない青空へ消えて行く。
母の最期は、マンションのベランダから堕ちて行く姿だった。
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奏奏奏(プロフ) - きぇぇぇぇ!!さん» ありがとうございます!これからも頑張っていきます! (2019年7月30日 18時) (レス) id: 681665cbc9 (このIDを非表示/違反報告)
奏奏奏(プロフ) - レナさん» ありがとうございます!励みになります´`* (2019年7月30日 18時) (レス) id: 681665cbc9 (このIDを非表示/違反報告)
きぇぇぇぇ!! - ラジエーションハウスは大好きな作品(?)なので頑張ってください!(?) (2019年7月30日 17時) (レス) id: 5d428d39a9 (このIDを非表示/違反報告)
レナ - 待ってました。これからも頑張ってください。 (2019年7月16日 22時) (レス) id: 869c734d75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奏奏奏 | 作成日時:2019年7月16日 19時