112話【訂正版】 ページ16
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A「...!...五十嵐さん。」
扉を開けた音に気が付いたのか、彼女はなびく髪を押さえながら振り返った。
五十嵐「...えっと...着いてきてしまってすみません。」
すると伊東さんは少しだけ困ったように笑う。
A「...心配、して下さったんですよね。」
「すみません」と付け足す彼女に僕は慌てて両手を胸の前で振った。
僅かな沈黙が僕らの間を彷徨う。
響いていたのは風が抜け、衣服がパタパタと躍る小さな音だけだった。
僕は一度きゅっと口を結んだ後、先程感じた違和感を彼女へ問いかける。
...
名前)「...私もCSLを直接診たのはこれで"2度目"ですね。」
...
五十嵐「伊東さん、さっき言ってた"2度目"というのは...」
A「...恐らくですけど、もう五十嵐さんも気付かれているんじゃないですか?」
彼女の言葉に僕は困惑した。
気付く、とはどういうことなのだろう。
すると伊東さんは思いがけない答えを僕へ渡した。
A「.....私の母です。」
五十嵐「.....え...?」
僕の中で再びヒモが絡まっていく。
彼女のお母さんは"誤診"で亡くなったはずなのに、CSL...?
CSLは良性腫瘍.....
五十嵐「...!!」
僕の脳内で彼女の言葉が再生され、ハッとする。
...
A「...その間に思い詰めてしまって、日常生活に支障を来たしてしまうケースも少なくないんです。」
...
まさか、彼女のお母さんは.....
バッと顔を上げると、そこには微笑んだままの伊東さんが立っていた。
彼女は哀愁漂う香りを隠そうとしているのか、一度瞳を閉じクスリと息を漏らした。
A「...そうです。母はカテゴリー4の乳ガンと診断され、心を病み....... 自 殺しました。」
僕は目を見開いた。
そんなの、酷すぎるじゃないか。
目の前で笑みを崩そうとしない彼女を見て、僕の瞳が熱くなり始めた。
悲劇が、"伊東A"という秀才を生み出してしまったのだ。
抑えきれなくなった雫が頬を滑って行く。
そんな僕の涙に驚いて、彼女は「どうして五十嵐さんが泣くんですか」と笑った。
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Aさんのお母さんの診断にミスがありました。申し訳ありません<(_ _)>
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奏奏奏(プロフ) - きぇぇぇぇ!!さん» ありがとうございます!これからも頑張っていきます! (2019年7月30日 18時) (レス) id: 681665cbc9 (このIDを非表示/違反報告)
奏奏奏(プロフ) - レナさん» ありがとうございます!励みになります´`* (2019年7月30日 18時) (レス) id: 681665cbc9 (このIDを非表示/違反報告)
きぇぇぇぇ!! - ラジエーションハウスは大好きな作品(?)なので頑張ってください!(?) (2019年7月30日 17時) (レス) id: 5d428d39a9 (このIDを非表示/違反報告)
レナ - 待ってました。これからも頑張ってください。 (2019年7月16日 22時) (レス) id: 869c734d75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奏奏奏 | 作成日時:2019年7月16日 19時