109話 ページ13
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五十嵐「...では僕は蛭田さんの検査に入ります。」
A「はい。お願いします。」
五十嵐が廊下に出て行ったのとほぼ同タイミングで緊急外来を告げるコール音が響いたのを耳にするA。
内線の受け答えを済ませ、広瀬はこちらへ慌てたように走ってくる。
A「...!...どうしました?」
広瀬「安藤先生、外傷の急患が...」
すると蛭田へ着替えを促し一度退室した五十嵐が2人の様子に気が付き口を開く。
五十嵐「...もし1人で手に負えなさそうなら、まずは軒下さんに連絡して下さい。」
それを聞くと広瀬は驚いた表情を浮かべ、「あの人デート中なんですよ!?」と言った。
A「大丈夫だと思いますよ!...軒下さんなら。」
広瀬「えっ...いや、でも...」
五十嵐「お願いします。」
ぺこりと頭を下げた後、五十嵐は放射線室へと戻って行った。
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放射線室前のモニターに腰掛け、カーテンの隙間から覗く2人の様子を見ながらAは小さく深呼吸をする。
心臓が酷く締め付けられる。
それに僅かではあるが吐き気まで催してきた。
A「...ふ、ぅ...」
大丈夫だ。
これは蛭田さんにとって安心出来る結果になるかもしれないことなんだから。
私が怯える必要性などないでしょう?
するとピコン、と機械的な通知音が鳴り、画面には蛭田さんのマンモ画像が表示された。
A「...あ、」
口端から漏れた吐息と発せられた声が重なり小さく音を形成する。
そのタイミングで五十嵐さんが放射線室から戻って来て、モニターを覗き込んだ。
五十嵐「...やっぱり...角度を変えて正解でしたね...」
顔付きは、悪い。
でもコアは不明瞭で、中心は正常と同程度の濃度...
それに石灰化も見られない。
喜ばしいことなのに、私の脳内は穏やかではなかった。
何故なのだろうか、視界が混ざり始める。
目の前に写っている画像は蛭田真貴さんのものなのに、どうして、"あのヒトのマンモ画像"と重なってしまうのか。
五十嵐さんが私の様子に異変を感じたのか名前を呼ぶ声が聞こえる。
私は口を噤み、そして身体の震えを必死で抑え込み、立ち上がった。
A「...蛭田さんに、伝えましょう。」
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奏奏奏(プロフ) - きぇぇぇぇ!!さん» ありがとうございます!これからも頑張っていきます! (2019年7月30日 18時) (レス) id: 681665cbc9 (このIDを非表示/違反報告)
奏奏奏(プロフ) - レナさん» ありがとうございます!励みになります´`* (2019年7月30日 18時) (レス) id: 681665cbc9 (このIDを非表示/違反報告)
きぇぇぇぇ!! - ラジエーションハウスは大好きな作品(?)なので頑張ってください!(?) (2019年7月30日 17時) (レス) id: 5d428d39a9 (このIDを非表示/違反報告)
レナ - 待ってました。これからも頑張ってください。 (2019年7月16日 22時) (レス) id: 869c734d75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:奏奏奏 | 作成日時:2019年7月16日 19時