壊れても (ページ6)

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俺が車道に飛び出したからだったら俺が悪くなってお金払わなきゃなんかなぁ、とか

あの自転車買ったばっかなんになぁ、とか

アイドルなのに顔に傷残ったらどうしよ、とか

暇すぎて色々考えた。

救急車の棚の上にある時計をちらっと見ればもう8時になろうとしていて、

そりゃ腹減るわ、と呑気に思う。

搬送先決まりましたー、という声に救急車は動き出した。

俺は後ろを向いた状態で走るから少々気持ち悪い。

10分ほどその揺れに耐えていれば病院に到着した。

降りるか、と身体を動かす。

救「大丈夫だよー。動かないで。」

え？と思うとベルトをつけられストレッチャーごと動かされる。

…俺歩けるんだが。

病院の中に入れば、また質問攻めだった。

名前、生年月日、年齢、今日の日付、、

はいはい、と答える。

検査するんやろな、と思っているとまた話しかけられ驚く。

「放射線を使うので保護者の方の同意が確認出来ますか？」

藤原「あぁ、はい。電話すりゃいいですか？」

すぐに繋がり、同意がとれたと伝えると、

車いすに乗せ換えられ、CTやらレントゲンやらを撮られる。

だから歩けるって、と車いすを押されながら少し恥ずかしく思う。

待っといて下さい、とそのまま待合室に連れられる。

母親も到着していて、頭にガーゼをつけて車いすに乗る俺に心配しきりだった。

大丈夫やって、とめんどくさそうに返事をしていると、

名前を呼ばれ、診察室へと入る。

医者「頭打ってますけど、CT見る限り全く問題ないです。

傷もそこまで大きくないんで目立たへんくなると思いますよ。」

医者からの太鼓判がでて、やっと車いすから降りられる。

気をつけや！あんたはほんまに、となぜか怒られながら母親の車に乗り、家に帰る。

怒っているのは心配の裏返しであることは分かっていたが、

それを素直に受け取るには俺は少々子供過ぎた。

大丈夫か、また後から痛いとこないか、

交通事故は後から来るんや、

と親が言う言葉を無視し、

翌日出てきた寝違えたような首の痛みを見て見ぬ振りをした。

後のことは親がやってくれていて俺はよく覚えていない。

ドライブレコーダーがついているというのは脅しではなく本当だったそうだ。

でも警察が調べたところ俺は飛び出していなくて、

車道の端っこを走っていたところを巻き込まれただけだったらしい。

全面的に車が悪い、となり俺には社会的なお咎めはなかった。