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俺らがもう少し幼かった頃、
まだ俺と長尾の目線が同じぐらいだったときに、
恋人できた!と俺らに嬉しそうに話してくれたことを思い出す。
それが一回ではなかったことも。
Subの子やねん!オレがリードするんや!とも
Domの人やねん!オレのこと守ってくれるんよ、とも
輝くような笑顔で言っていた。
……でもその数ヶ月後には泣いているのだ。
オレのせいや、って。
18になると抑制剤を購入する規制が緩くなり、
病院でも処方してもらいやすくなる。
その頃から彼が恋人を作ることは一切なくなった。
なにわも忙しくさせてもらっとるからな、と笑い、
寂しがりやで末っ子気質な彼だから絶対に心細いはずなのに、
誰にも頼らず白い錠剤を毎日流し込んで本能を抑え込んでいた。
そんな長
Normalやから、Switchやから、なんて。
窮屈だ、世界は。
カシュッ、とこんな場に不釣り合いな音がした。
高橋「謙杜、乾杯しようや!」
な?と缶を突き出す恭平は俺が見てきた恭平と違う。
大好きな人に触れる術を持って強くなった。
涙目の長尾も缶を開け、突き出す。
コツン、と控えめに当てた缶。
かんぱぁい!と恭平は無駄に大きい声を出す。
うまいなぁ、みっちーありがと、と言い、
ごくごく、と一気に飲み干す。
高橋「大丈夫や!なぁ!」
空元気なのは彼も承知だ。
薬は長尾の身体を蝕んでいくだろうし、
本能には逆らえない。
でも、どうにもできない時は根拠なんて忘れるのが一番だ。
大西「恭平適当やなぁ(笑)」
道枝「そうっすね(笑)」
大西「…でも、、そういうやつも必要なときあるよな。」
流星くんの呟きに俺は大きく頷いた。
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作者名:哀川樹 | 作成日時:2022年9月30日 22時